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 海南には100年以上前から続く棕櫚(シュロ)縄の工場があります。昔ながらの機械を今も使っているのは、ここが最後かもしれません。
 写真の職人は、棕櫚縄を60年以上作り続けています。彼の後継ぎはだれもいません。当初、この工場にある機械は、人がペダルをこいで動かしていました。人力だった動力源は電動モーターに代わりましたが、機械は以前と同じままです。
 初めてここを訪れた時、カタカタと音を立てて回る歯車、窓や扉から差し込む自然光の美しさに息をのみました。どこにでもあるような古い工場のように見えますが、そこには手仕事で棕櫚を作ってきた職人の魂が宿っています。
 100年に渡り、積み重なった油や棕櫚の繊維、ほこりが床に落ち、染みついています。ここは私にとって特別な場所です。
 今回で「CLASSIC WAKAYAMA」は終了します。またいつか、和歌山の情景や物語を読者の皆さんと分かち合える日が来ることを願って…。ありがとうございました。

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2015072202saimoサイモン・ワーン(Simon Wearne)

オーストラリア出身の写真家、映像ジャーナリスト。2008年に来日し、和歌山大学観光学部の特任助教を務めるかたわら、太地町の捕鯨文化をユネスコの産業遺産に登録するため、文化財の独自研究と調査を進めている。

(ニュース和歌山2016年3月23日号掲載)