東南アジアを抜け、最終ステージである中国に入りました。中国の田舎ではほとんど英語が通じません。そんなときは筆談でコミュニケーションをとります。漢字だとフレーズを覚えるのが割と簡単です。現地の人からすると、「なぜ漢字を書けるのに会話ができないんだ?」と不思議に思うようでした。
中国といえば美食の国です。中華料理はパンチの利いたパワーフードのイメージがありましたが、町食堂で食べた料理はどれも思いのほかあっさりとした優しい味でした。スーパーには多くの種類のインスタントラーメンが並びます。どれも非常に美味しく、その安さとクオリティーの高さに驚きました。
春節の時期に走行し、鳴り止まない爆竹と煙の中を走り続ける試練の日々となりました。なかなか宿泊先が見つからず、やっとの思いでたどり着いた宿で、春節用の夕飯をごちそうしていただいたときは本当に幸せを感じました。他にも、追い越し際の車からオレンジをもらったり、道中出会った大学生たちと話が盛り上がり昼食をおごってもらったり、一緒にツーリングを楽しんだり。中国でも多くの優しさにふれました。
写真=中国の学生(左2人)
こうして、2年間で北米、ヨーロッパ、アフリカ、中東、アジア、計38ヵ国、2万㌔(地球半周分) を大きなトラブルもなく無事に走り終えることができました。スタート時には果てしなく思えた道のりも、一こぎ一こぎがゴールへと近づき、あきらめず継続することが力となることを実感できました。
世界中の人々との出会い、そして彼らからもらった優しさと笑顔があったからこそ続けられた旅でした。世界各国、文化や宗教、貧富の差など日本との違いは数えきれませんが、「助け合い精神」と「笑顔」は全世界共通でした。
人との出会いには必ず意味があるはずです。世界中の人々からもらった優しさに感謝の気持ちをもって、一生懸命自分にできることをしていきたい。積極的な国際交流によって、助け合いの螺旋(らせん)に繋げていけたらと思います。
夢には2種類あります。お金で叶えられる夢とお金だけでは叶えられない夢です。お金で叶えられる夢は、お金を払い、だれかのサービスを受けることで得られます。お金で叶えられない夢は、やる気があれば誰でも挑戦できます。やるかやらないかの違いだけで、特別なことじゃありません。
「無理、できない」は可能性を奪います。あきらめる理由を探すことは容易です。お金がないから、体力がないから、危険だから…。リスクを負わないことは楽ですが、未来をあきらめ、可能性や自信を失うことになります。難しい状況でも、「こうしてみたらどうか」と常に問いかけることが大切だと感じました。その先に新しい出会いや考え方を得る機会があるかもしれません。やったことのないことをやってみる、面白いことにチャレンジする気持ちを一生涯持ち続けたいと思っています。
写真=関西空港に到着
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自転車で世界一周の新婚旅行に挑んだ辻陽平さん、夕佳さんの連載は今回で終了です。旅の様子はブログ「フィールドテスト 自転車世界一周」で紹介。
(ニュース和歌山2016年5月21日号掲載)