和歌山マリーナシティホテル総料理長に日本イタリア料理協会副会長。齊藤実さん(59)の肩書きに、この4月、ホテル支配人が新たに加わった。料理面だけでなく、ホテル運営全般の指揮を執りながら、多忙な合間を縫い、今も調理場に立つ。心掛けるのは、ほれ込んだ和歌山の豊かな食材を生かした料理だ。
毎日でも飽きない料理
イタリア・パルマでの国際食品見本市から帰国した翌5月16日朝、会議前にわずかな時間を見つけ、ホテル敷地内の自家農園に足を運んだ。イタリア野菜のアーティチョークやフェンネル、イタリアンパセリにバジリコ…。多彩な野菜の収穫時期を見定める。
「20代の時に修業したミラノの店は裏に農園があって、そこで採った野菜をその日の料理に使っていました。店に頼み、収穫は私が担当させてもらっていたんですよ」
出身は茨城県。東京のホテルでフランス料理の基礎を学んだ後、イタリアへ渡り、4年間で三つ星レストランを含む12の店で腕を磨いた。
「フランス料理にももちろん魅力はあるが、一生の仕事にするなら、毎日食べても飽きない料理を作りたいと思いました。その中で出合ったのがイタリア料理です。現地で最も勉強になったのは、素材の扱い方。フランス料理よりイタリア料理の方が手を掛けず、ストレートに素材の良さや鮮度を生かすんです」
和歌山から美食発信
帰国後、東京で2つの店のオーナーシェフを務め、2010年に和歌山ロイヤルパインズホテル(現・マリーナシティホテル)へ。人気の「活あわびのスパゲッティ」を筆頭に、鮮度の良い材料を生かした料理を提供する。2年前からは、副会長を務める日本イタリア料理協会の主催で「和歌山イタリアンフェスタ」を開き、会長の落合務シェフら著名シェフの料理を和歌山で味わえる機会を設ける。
「シェフの皆さんが驚くのは、和歌山の魚の鮮度。外海と内海、両方で獲れた新鮮な魚介類が手に入るところは、全国探してもそう多くない。でも、その魅力が東京ではまだまだ知られていません。山の幸も含め、和歌山の食の豊かさを全国に広めたい」
来年には新たな食のイベントを計画中。イタリア情緒あふれる海辺のホテルから、美食を発信し続ける。
【和歌山マリーナシティホテル】
和歌山市毛見1517
ホテル内のカーロ・エ・カーラと四季彩はランチが11時〜14時半、ディナーが17時半〜21時。無休
☎同ホテル073・448・1111
(ニュース和歌山2016年5月25日号掲載)