18歳から投票できる〝歴史的選挙〟となる参議院議員選挙が22日(水)公示、7月10日(日)投開票で行われる。公職選挙法の改正により、若年層が加わる初の選挙。政治の風向きにいかに影響するか、注目される。
法改正の背景には少子高齢化と若年層の低投票率がある。平成に入ってからの参院選9回の平均投票率(全国)は、60代の70%に対し、20代は35%と半分。県内でも3年前は70~74歳が76%だったが、20~24歳は31%に留まった。
投票率の高い中高年世代は人口が多く、低い若年層は少ないため、政策を決める際に世代間で〝声の強さ〟に差がある。この解消が公選法改正の目的だ。
また、「共通投票所」が投票日に駅などに設置できるようになるほか、期日前投票所の受付時間が最大2時間延長、投票所に同行できる子どもが幼児から18歳未満に拡大される。
共通投票所は既に期日前で認められ、他府県では大学などに開設されて若い世代の投票に貢献している。しかし、県内の各市選管は「準備が間に合わない」との理由で実施しない。
県内では20歳以上の82万人に加え、18、19歳の2万人が新たに有権者に。1998年7月11日までに生まれた人が対象となる。県選管と市町村選管は昨年度、県内全域の高校で出前授業を実施し、投票に備えてきた。
制度改正が投票率アップへの起爆剤になるか──。18歳選挙権で和歌山の選挙は、若者はどう動くのか。今回からシリーズで紹介する。
若者の心 どうとらえる
「私たちの声を、私たちの将来に」。選挙管理委員会事務局前に掲示されたポスター。いつもの選挙業務に加え、選管職員は若年世代の投票率アップに向けた取り組みに追われている。
県選管は昨年から、県内の市町村選管と連携し、全ての高校で職員が出前授業を実施。候補者の政策を知る方法や投票の意義を伝えた(写真)。投票箱と記名台を使って体験も行った。
「『投票は意外と簡単だった』との感想が聞かれ、難しそうで行きにくい選挙のイメージを変えられた」と県選管職員。ただ、体育館で全校生徒に説明しただけの学校など選挙への理解の深さに不安が残ったのも事実だ。
若者の心をとらえる試みにも力が入る。県選管は、和歌山市のモデル、本谷紗己さんと18歳の若者が共演し、投票日や選挙の必要性についてPRする動画を独自に作成。参院選が公示される22日までにインターネットで公開、テレビCMでも流す。
また、各市選管は、若者が投票以外で選挙にかかわる機会を設ける。岩出市選管は、投票所の立会人に18歳~30代を優先的に採用。応募14人中3人が18歳だった。「関心の高さを感じます。友人間で話題になり投票に行く動機になれば」と期待する。
海南市も30歳未満に募ったが応募はわずか1人。同市選管は「もっと応募があると思っていた。若い世代へ広報は難しい」。
和歌山市選管は市立和歌山高校の教諭を対象に、選挙のルールに関する研修を開き、学校を通じた周知の強化に躍起だ。
同校は「メールでの選挙活動」「有権者でない友人は運動に参加できない」などの注意点を紹介。生徒から「こんなことも違反なのか」と驚きの声があがった。田野岡教彦教頭は「身近に潜むリスクから関心が広がった。組織票などに流されない、見極める目を育てたい」と語る。
高齢化が進む和歌山で、若い世代の声は故郷の将来を左右する。選挙と若者の接点づくりが投票率のカギとなりそうだ。
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土曜号掲載。次回は18、19歳の新有権者の質問に、立候補予定者が答えます。
(2016年6月11日号掲載)