北ブラクリ丁に2日、のれんが掛かったばかりの「ビストロの~や」は和歌山産ジビエ料理の専門店。オーナーで、自ら調理場にも立つ北浦順嗣さん(68)は、50年近い経験を持つベテラン猟師だ。食べ慣れたジビエの魅力を、手軽な価格で多くの人に堪能してもらおうと、シンプルさが売りの〝猟師料理〟で出迎える。
需要拡大目指し
使うイノシシやシカ肉はもちろん県産。〝串揚げ150円〟〝からあげ300円〟〝一口ステーキ300円〟(いずれも税抜き)と、財布に優しい価格がメニュー表に並ぶ。
「イメージは大阪・新世界の串カツ屋さん。雰囲気も、値段的にも入りやすい店を目指しています。フランス料理やイタリア料理のような、見た目にもこだわった、手の込んだ料理はできません。お出しするのは〝猟師料理〟です」
生まれは清水町(現在の有田川町)。狩猟免許は20歳で取得した。2012年、ジビエ肉を販売する「いの屋」を和歌山市藤田にオープン。昨年春には和歌山鳥獣保護管理捕獲協会を立ち上げた。
「農作物被害対策として、協会では猟師が捕まえたイノシシやシカを買い取っていますが、このうち、市場に出るのは4割で、残る6割は冷凍庫に眠ったまま。これを何とかするため、気軽に食事ができ、おいしさを知ってもらえる店をと考えたんです」
負のイメージ払拭
昔から自宅で食べてきた煮込みは、2時間煮て一晩寝かし、さらに1時間煮る。わずかに加えたトウバンジャンの辛さが食欲をそそる一品だ。温泉卵がのった「いのししそぼろ丼」は子どもにも好評。「硬くて臭いと思っていたが、そんなことはない」「牛や豚よりヘルシー」。ほおばる客の声に手応えを感じる。
「自然の中を走り回っているため、筋肉質で硬いイメージを持つ人が多いけれど、串揚げ用の肉も揚げる前にまず一度煮ている。手間を惜しまなければ軟らかく食べられる。低カロリーで高タンパク。シカのコラーゲンはアミノ酸の粒子が小さくて吸収しやすく、美肌効果があると言われます。イノシシは脂肪を蓄える12月以降がおいしい時期ですが、草食動物のシカは今、夏場がおすすめですよ」
新メニューにカレーやハンバーグも構想中。ジビエ肉が特別な食材でなく、家庭の食卓に並ぶ日を夢見ている。
【わかやまジビエ料理専門店ビストロの~や】
和歌山市中ノ店北ノ丁8(北ブラクリ丁内)。17時~21時半。日曜休み。
串揚げやからあげはテイクアウト可。☎073・423・5550
(ニュース和歌山7月27日号掲載)