紀伊風土記の丘への入口にある老舗、喫茶ピュア(和歌山市岩橋)。店主の松本雅之さん(39)は、1971年に父親が創業した当時からの味を守り続ける。一方、食の安全に力を入れる近年は自ら米を育て、地元農家から仕入れた無農薬野菜をできるだけ使った料理を提供。心も身体も安心できる店を目指す。

創業時からの相棒

170125_miryoku 多くのファンの胃袋を満たしてきたピュアロップカレーは店の看板メニュー。年季の入ったフライパンを使う手つきは鮮やかで、次々とドライカレーを卵で包みこむ。

 「父が創業した当時から使い続けるフライパンです。曲がってしまいましたが、油が染み込み、手にもなじんでいる。店の味を生み出してきたものを大切にしたいんです」

 1971年に風土記の丘が開園。同時に売店を始めたが、客から「休憩場所を」との声を受け喫茶店に切り替えた。

 「コーヒーのブレンドは45年前に父が考え、味は今も変わりません。『苦味と酸味のバランスが良い』と長年通ってくれる方が多く、『昔デートで来た』と子や孫、ひ孫まで連れて来る人もいますね」

農業への挑戦

 高校卒業後に店を手伝い始め、父が体調を崩した10年前に継いだ。喫茶店ながら、豊富な食事メニューが売りの店には、開店から閉店までひっきりなしに客が訪れる。次第に「もっと料理にこだわりたい」との思いが募った。

 「父の実家が農家で、昔から米作りを手伝っていました。食事は人の命を司る大切なもの。生産から食べるところまで責任もって見届けられるよう、5年前に米と野菜の無農薬栽培に挑みました。店で出すと、『鮮度が違う』との声もいただきました」

170125_ryouri 今も米のみだが、低農薬で栽培。野菜は農業を通じ出会った信頼できる青年農業者から、できるだけ無農薬のものを仕入れる。

 「農業の大変さを知り、にんじんの葉も惜しんで使います。無農薬の米や野菜は、素材本来の味が良く出ておいしい。生産者と顔の見える関係が、安心できる食材の提供につながっています」

 3年前からは地元産のイノシシやシカの肉を使った料理と食材の幅を広げる。

 「低カロリーで高タンパク。イノシシ肉の生姜焼きは手作りのラー油が隠し味です。地産地消を続け、地元食材の良さを多くの人に知ってもらいたいですね」

 なるほど、店名の通り、地元への愛も〝純〟だ。

喫茶ピュア

和歌山市岩橋1349。午前7時~午後4時。月曜休み。☎073・472・2685。

 

(ニュース和歌山2017年1月25日更新)