力持ちの「豚吉君」、倹約家の「ひじき君」…。海南市日方に9月、開店した「一年二組包子屋小豆」は、それぞれキャラクター設定がある包子(中華まん)を販売する。店主の中井幸陽子さん(50)は「テーマは学校。商品を子どもに見立て、〝担任〟の私がおいしくなるよう世話します」。優しさと愛情をほっこり包み込む。
看板メニュー〝豚吉君〟
ホカホカの豚まん、豚吉君を手で割ると中から肉汁があふれ出る。コショウが利いたジューシーな肉と、モチモチの生地が食欲をかき立てる。
「肉は機械でミンチにせず、包丁で細切れにします。理想の食感、皮の厚さに仕上がるよう、小麦粉と強力粉のバランスをとり、発酵させて一つずつ手で包みます。注文を受けてからせいろの蒸気でじっくり蒸し、芯まで温めます」
看板メニューの豚吉君のほか、下津産ひじきと紀南の切り干し大根を中華風にまとめて焼く「ひじき君」、粒々小豆と角切りの鳴門金時が特徴の「小豆ちゃん」。期間限定の〝編入生〟も時折登場する。
「気温や湿度で膨らみ方が日ごとに変わります。一つずつ異なる個性は、学校の子どもたちと似ています。人が口にするものだから、手仕事にこだわり、化学調味料は使いません。私たちが暮らす環境と似た場所で育った食材は身体に優しいと考え、国産、地元産を優先的に使います」
夢は絵本出版
大阪出身。父子家庭で育ち、小学生のころから家族の献立を考え、放課後になると買い物カゴを手に市場へ走った。25歳の時に父親が倒れ、以後15年間の介護経験が生きる。
「おかゆと魚のすり身、野菜のペーストを毎日作りました。父が口から食べられなくなって、五感で味わえるありがたさを実感し、食と健康を意識し始めたんです」
33歳で長男を出産し、家族で和歌山へ。4年前から手作り品を販売するイベントで包子を売るようになった。
「会場を見渡すと、男性向けの商品が少なかったので、得意料理の包子で男性客のお腹を満たし、満足してもらおうと考えました」
夢は豚吉君たちを主人公にした絵本を出版すること。
「物語を創作し、読んだ子に『豚吉君を食べたい』と言ってもらうのが理想。レシピも本に載せ、親子で一緒に包子を作る風景が日本や世界中に広がれば最高ですね」
【一年二組包子屋小豆】
海南市山崎町3-1-10にあるオカジ紙業の駐車場から北へ約100㍍。火、木、土のみ営業。正午〜午後4時。問い合わせメール(azuki.no.gohoubi@gmail.com)。
写真=影の人気者、ひじき君(1つ350円)
(ニュース和歌山/2017年12月13日更新)