2001年に始まった21世紀も18年目を迎え、今世紀生まれの若者が続々と活躍しています。夢と目標に向かって翔る〝21世紀世代〟を紹介します。
世界楽しませる映像作り 映画監督目指す 井澤岳丸さん(智辯和歌山高1年)
捕まえた怪獣を兵器として他国に輸出する世界警察、そのやり方に疑問を持ち反旗を翻す科学者、故郷を失い漂流する宇宙人。これらが登場する特撮怪獣シリーズ「スパークエイト」を小学3年から撮り続け、全7作まで数えた。プロの監督を目指し、日夜、物語を練り、絵コンテを描く。「ゴジラのように世界中で楽しんでもらえる作品を」と語る。
8歳の時に両親に連れられ、スペインに1ヵ月滞在。アフリカから来ていた難民の少年と怪獣の人形で遊び、心を通わせ、怪獣の面白さは言葉も国境も越えると知った。
帰国後、遊びで怪獣を家庭用のビデオカメラで撮影し、映像作品にしたところ担任の目にとまり、クラスで上映会を開いた。周囲の笑顔に喜びを覚え、ゴジラやガメラのシリーズをモデルに映画作りに没頭。脚本、撮影、編集を1人でこなし、紀美野町の山中や神社を舞台に1年に1本、新作を発表してきた。
2013年以降は和歌山市加太で開かれるKisssh─Kissssssh映画祭に出品。同級生や家族を役者に立て、15分と短い作品の中で善悪について悩む人物を描き込んだ。観客から「詰め込み気味」との声があったが、その密度は周囲を驚かせた。
現在は、スパークエイトを離れて新作に取り組み、講評が付く映画祭に出品するのが目標だ。インターネットやミニシアターで手軽に映画が見られる時代だが、「わざわざ映画館に通ってでも臨場感を味わいたいと観客に思わせる」と意気込む。
東京五輪で満開の笑顔を スケートボード選手 四十住さくらさん(伊都中央高1年)
スケートボードに乗り始めた4年前、「お兄ちゃんを超えたい」だった目標が、今は「2020年の東京オリンピックで金メダルを獲る」に変わった。本格的に始めてわずか3年、夢の実現に向け急成長中だ。
平日は授業を終えるとまっすぐ帰宅。まず、自宅敷地内に兄らが手作りした練習場で汗を流す。その後、母の運転する車で大阪や奈良のスケートボード場へ向かい、深夜まで練習。週末は大阪、兵庫、三重などの施設を回って滑りに磨きをかける。そんな生活を3年間続ける。
自宅にはメダルやトロフィーがずらりと並ぶ。最近加わったのが昨年11月、世界の女子選手が集まるアメリカ・サンディエゴでの大会「エクスポージャー」で獲得した2つ。1つは15歳以上のアマチュア選手が出るクラス「ボウル15・アンド・オーバー」での優勝、もう一つはプロ、またはプロに匹敵するアマチュア選手が参戦するクラス「バート・プロ」での3位のものだ。
バート・プロでは、大会会場に慣れている外国人選手に対し、試合直前に2回しか滑れなかったハンディがありながらの好成績。それでも、「日本で練習してきたことの半分ちょっとしか出せなかった。全部出し切れていれば勝っていた」。優勝を逃しながらも大きな自信を得た。
「自分の最大の武器は緊張しないこと。盛り上がった方がうれしいし、視線は大歓迎」と明快だ。大観衆が見守る2年後の夏、東京で笑顔満開の〝さくら〟が見たい。
ねらうはパリ五輪の金 レスリング選手 岡本景虎さん(和北高2年)
押して、押して、さらに押す。そのプレッシャーを嫌がった相手選手が前に出ようとする力を利用し、鮮やかに技を繰り出す。「それが自分のスタイル。レスリングをやってる以上、夢はオリンピックの金メダルです」
幼稚園年中で出合ったレスリング。高校1年までは全国大会で目立った成績は残せなかった。それが2年になった昨年、4月のJOCジュニアオリンピックカップ・カデットの部(17歳以下)グレコローマン46㌔級で優勝すると、8月の全国高校生グレコローマン選手権、10月の国体と3位に入った。
9月には日本代表として、ギリシャで開かれた世界カデット選手権に出場。初めて挑む国際大会、初戦は突破したものの、2回戦で苦杯をなめた。「1回戦、インドの選手は体が柔らかく、関節技をかけづらかった。負けたカザフスタンの選手は体幹が強く、体の軸がぶれなかった」。目指す
〝世界〟の一端にふれた。
この大会、日本代表監督を務めた森下浩・和歌山北高校監督は「勝てる相手に負けた。最後は詰めの甘さが出た」と厳しいが、それも期待の裏返し。「世界で結果を残してきた日本の軽量級の伝統を受け継ぐ可能性のある選手」と語る。
今年の目標はJOCカップ2連覇、そして世界カデット選手権で昨年上がれなかった表彰台に立つこと。その先に見据えるのは2024年のパリ五輪だ。「23歳、選手として一番いい年齢だと思う。その4年後も考えています」。日の丸を背負う覚悟はできている。
笑顔届ける小さな落語家 ぴょんぴょん亭うさぎ 小阪はやのさん(岩出小5年)
「ぴょんぴょん亭うさぎです!」。両手を頭にうさぎの耳を真似て登場し、客を和ませる。落語に入ると、そばをすすったり、酔っ払ったり、大人顔負けの仕草で作品の世界へ引き込む。これまで高座に上がったのは140回以上。「一人で何役も演じられるのが落語の面白いところ。表現を磨き、プロを目指したい」
4歳でアマチュア落語グループ、わかやま楽落会の体験会に参加。練習では緊張のあまり高座で泣き出し、話せなかったが、発表会では堂々と披露し周囲を驚かせた。小1で宮崎の子ども落語全国大会の審査員特別賞に選ばれ、4年の時に大阪のくらしの今昔館が開く大会で優勝。天満天神繁昌亭で得意演目「ちりとてちん」を聞かせた。
月2、3回、楽落会で地域のイベントや老人ホームを訪問。学校ではバスケットボール部に所属し、試合と落語会を〝ハシゴ〟することもあるが、1日1席は必ず両親に披露しアドバイスを受ける。特に、扇子や手ぬぐいで登場人物の動きを再現する仕草にこだわり、「子ども落語家はかわいさや勢いで笑いをとりますが、限界がある。大人の世界でも通用するよう、表情、声色、目線まで全てに気を配ります」。
昨年、岩出の民話を父がアレンジした創作落語「住蛇が池」に挑戦した。「古典落語のようなプロのお手本がなく不安でしたが、笑ってくれてホッとしました」。地元ロケの映画にも出演し、「役になりきるのは落語と同じ。自分の世界へ引き込める落語家になる」と目を輝かせる。
(ニュース和歌山/2018年1月3日更新)