昭和24年(1949年)創業の「元車庫前丸宮中華そば本店」(和歌山市毛見)。4年前に受け継いだ3代目、大山茂樹さん(31)は祖父・祖母の時代から続く伝統の味を継承しながら、材料にこだわり、日々磨きをかける。さらに足赤海老や合鴨など和歌山の素材を使った創作めんを、昨年から夜のみ、期間限定で提供。中華そばの老舗が新たな味へ挑む。

伝統の味に磨き

──今年、創業69年です。

 「祖父と祖母が路面電車の車庫があった前で、屋台を引いて始めました。今の場所に移ったのは73年。私は3代目で、4年前に継ぎました」

──27歳の時ですか。

 「はい。辻調理師専門学校で学んだ後、岐阜にある全国的に有名な料亭、たか田八祥や、名古屋の寿司屋などで腕を磨いてきました」

──丸宮と言えば醤油ベースの豚骨スープです。

 「味を受け継ぐのに、最初の半年は苦労しました。が、慣れてきた後は伝統の味を守りつつ、さらにコクが出るよう研究を重ね、スープはげんこつ(大腿骨)だけだったのを、背骨も加えて取るようにしました。業者から仕入れていためんは自家製に。国産小麦をベースに独自配合し、女性客に喜んでもらえるよう、もちっとした弾力を出しました。『味が落ちたと言われないか?』との心配がありましたが、通ってくださる頻度が増す常連さんも多く、それは素直にうれしいです」

足赤海老でつけ麺

──一方で新たなめん料理を始めたそうですね。

 「昨年から毎日ではないんですが、夜のみ、和歌山の素材を使ったものを期間限定で出しています。最初は紀州鴨麺。丸々一羽仕入れて店でさばき、骨から取った出汁と魚介の出汁を合わせ、備長炭であぶった鴨チャーシューなどをトッピングしました。盛り付ける器は納得のいくものが見つからず、県産の梅、柿、桃から作った釉薬を使い、自分で作りました」

──手が込んでいます。

 「11月からは足赤海老つけ麺(写真下)を出しています。フランス料理のビスク(濃厚なクリームスープ)にヒントを得ました。漁師さんから直接仕入れた新鮮な足赤海老で作るつけ汁は、めんによくからむよう泡立ててクリーミーに。締めはつけ汁にご飯を入れリゾット風に味わってもらいます。ラーメン好きの方からも『このレベルの味は県外まで行かないと食べられない』と好評です。トッピングの魚介類はその日捕れたもの次第。タイやスズキなどいい魚が入った日は、にぎり寿司も出しています」

──中華そば店の枠を超えた攻めの姿勢ですね。

 「上を目指すには、常に味の研究は欠かせません。中華そばの味は守り続ける一方、店名に〝麺遊〟と入れようかとも考えているんですが、遊び心を大切に、料理を提供していきたい」

【元車庫前丸宮中華そば本店】
和歌山市毛見1130-3 ☎073-445-4881
11:00〜14:30、17:30〜22:30(スープがなくなり次第終了)。月曜休み(祝日の場合は翌火曜)

※創作めんは夜の営業のみ。提供していない日もあるため、同店ツイッター(https://mobile.twitter.com/marumiyatyuka)か電話で確認し、電話予約を。

 

(ニュース和歌山/2018年1月24日更新)