緑泥片岩(青石)で積まれた石垣が豊臣期、砂岩を用いた石垣が浅野期、そして、花崗斑岩(熊野石)の石垣が徳川期であると、和歌山城の石垣は石質で分類されることがあります。大筋は間違っていないのですが、すべてをこの定規に当てはめることはできません。

 豊臣期は、緑泥片岩を自然のまま積んだ「野面(のづら)積み」ですが、同じ石を用いても、天守閣周辺と同二ノ門(楠門)への石段を造る石垣とは積み方が違います。前者の野面乱積みに対し、後者は横長の石を多く用いて、石同士を密着させながら積むので、横に線(横目地)ができています。野面布積みと言われ、天守閣周辺の石垣より新しい積み方です。また鶴ノ渓周辺でも、石垣の角に大きな長方形の緑泥片岩を長短互い違いに組み合わせた「算木積み」が見られます。天守閣周辺では見られない積み方をしています。

 花崗斑岩を用いて、石と石の間に隙間のない「切込接(はぎ)」は、一中門や不明(あかずの)門脇の高櫓台と岡中門の松ノ丸櫓台の石垣に見られます。五代藩主吉宗の改修とされるこれらの石垣は、江戸期の構築と修復部分です。南ノ丸の石垣も初代頼宣が拡張した時の構築ですから、江戸期の石垣ですが、城内側に至っては、砂岩で積んだ浅野期の打込接とさほど変わりません。

 和歌山城は山上から麓へさがれば、石積み技術の進歩を知ることができるのですが、どうしても完成度の高い花崗斑岩の切込接の石垣に目が奪われてしまいます。そこには石の角をL字状に切り合わせたものや五角形に加工したものなど多彩な石の造形が楽しめます。

 野面積みと切込接。相反する石積みに、技術の進歩が見て取れるのですが、隙間の多い野面積みは、水はけもよく見かけ以上に強いのだそうです。緑泥片岩を高く積み上げた野面積みの光景は、他城では味わえない和歌山城の魅力と言えますが、その風景と切込接の石垣風景は、それぞれ違った趣を感じさせてくれます。これこそが和歌山城散策の一番の醍醐味と言えるでしょう。

写真上=鶴ノ渓の野面積み、同下=完成度の高い一中門の切込接

(ニュース和歌山/2018年4月7日更新)