昔、瀧之拝太郎という男が、刀で穴壺を掘っていた。あと一つで千個というところで刀を落とし、拾おうと滝壺に入った。底には地底の国が広がり、滝の主だという姫が彼に刀を差し出した。
拝太郎は、宮殿で歓迎を受け、美しい侍女に囲まれ時を忘れた。拝太郎が帰らぬことで騒ぎになっていた村にある日、拝太郎が現れ、姫からもらった丸石を持っていた。
滝の拝では毎日、雷のような滝音が響いていたが、丸石のおかげで急に音がしなくなった。村人は喜び、丸石を祀る金比羅の社を建立し、滝の主である姫を礼拝した。
拝太郎が掘ったという無数の穴壺、実は約1400万年前に隆起した熊野酸性火成岩に、小さな石が入り込み、侵食してできた穴だという。
(ニュース和歌山/2018年4月14日更新)
大上敬史さん作製「和歌山県の滝」で、県内の滝が紹介されています。