その昔、古座川の大奥という村に、太郎、次郎という兄弟が父と暮らしていた。ある日、太郎は漁師町まで半日かけて行った。鰹を買うと、漁師から「つくって食べよし」とお造りを勧められた。
ところが太郎は、焼いたり煮たりし、残った身や骨を近くの滝壺に投げ入れた。漁師の言葉を「鰹は作ることができる」と勘違いし、滝に鰹を〝植えた〟のだ。太郎は「育ったか」と滝に通い、ある日、見慣れない魚がいることに気づいた。実はサンショウウオの子だったが、魚の身から生まれた魚だと喜んだ。こうして、植魚の滝と呼ばれるようになったと伝わる。
山村の子たちは、海の幸をなかなか食べられなかったのか。秘境にふさわしい話だと思い、シャッターを切った。
(ニュース和歌山/2018年5月5日更新)
大上敬史さん作製「和歌山県の滝」で、県内の滝が紹介されています。