南国のフルーツに、シルクロードの果物と花の香り…。席に着くと、香り高い紅茶の試〝香〟用小瓶がワゴンに乗せられ運ばれてくる。和歌山市新通の「香茶専門店フレグランス」はアンティーク調の店内に常時、30種類の茶葉をそろえる。店主の和田展幸さん(50)は「好きな香りで心安らぐひとときを。一杯一杯、最後の一滴まで真心を注ぎます」とほほ笑む。

紅茶は30種以上

──紅茶の道に進んだきっかけは。

 「紅茶が出ない日はないほど母が好きで、自然と親しむようになりました。30年程前、まだ東京、大阪など都会にしか紅茶専門店がない中、専門誌片手に全国の店を飲み歩きました。行く先々で茶器や茶葉について教わり、いれ方は見て盗みましたね」

──紅茶でなく、〝香〟茶専門店なんですね。

 「飲み歩くうち、茶葉に香りづけし、ハーブやドライフルーツが入っているフレーバーティーにひかれたんです。当時、『紅茶はミルクかレモンで飲むもの』とされていました。もっとたくさんの種類、飲み方があることを地元和歌山の人に知ってほしいと、22年前に専門店を開きました」

──香りを試せます。

 「開店当初、15種類程度だった茶葉は、今は常時30種類、期間限定を合わせると40種類以上はありますね。訪れた神戸の店で茶葉を選んでいたところ、店主が『字だけでは分からないでしょう?』と缶のフタを開けてかがせてくれたんです。香りや味はその人の好みですから、『おすすめの紅茶』ではなく、自分で選んだ紅茶の『おすすめの飲み方』を提示したい。サンプルには、『ハーブティーの一種』『ホットのみ』などとシールをはり、参考にしてもらっています」

独自のブレンド

──いれ方に熟練の技が光ります。

 「ボコボコと泡が立つ95〜98度の湯が紅茶の適温と言われますが、あえて少し水を足して落ち着かせてから茶葉に注いでいます。こうすることで、フレーバーティーの香りを逃さず香茶に閉じ込められるんです。茶葉が上下に浮き沈みするジャンピングで飲みごろを見極めます。ダージリンのファーストフラッシュと呼ばれる春摘み茶葉は、色こそ黄色に見えるほど薄いですが、さわやかな甘みに加えコクがある。色と味のギャップを楽しんでほしい一品です」

──オリジナル香茶もあるんですね。

 「店でブレンドしたのが15種類以上。コーヒー豆を入れて、カフェラテの一種『キャラメルマキアート』を表現した香茶も作りました。県産食材も試み、生の土しょうがをスライスし乾燥させ、セイロンティーにブレンドした黒蜜のジンジャーティーや、紀州梅を1年間砂糖に漬け込んだシロップを、香りの少ないキャンディティーと合わせ、梅の風味を楽しめる梅紅茶が人気です」

──軽食にもこだわりが感じられます。

 「ワッフルやスコーン、ケーキ、アイスにサンドイッチと国産無農薬の材料を使った手作りです。飲む人に楽しい時間を過ごしてほしいから、作法とか堅苦しいことは言いたくない。日々勉強を続け、お客さん自身が選んだ茶葉の魅力を最大限に引き出し、最高の香茶を届け続けます」

【香茶専門店フレグランス】
和歌山市新通3─4
☎073・422・3626
㊋〜㊎は9:30〜19:30 ㊏㊐㊗は9:30〜18:00 月曜休み
http://www.wadami.jp/

(ニュース和歌山/2018年5月23日更新)