中世の紀北には、根来衆と呼ばれる僧兵1万を擁する自治国家があった。種子島から火縄銃を入手し、津田流砲術を駆使した。天正13(1585)年、秀吉は10万の大軍を差し向け、根来勢の出城は次々と攻め落とされた。秀吉軍が根来寺へ襲来した時は、すでに兵力を失っていたという。

 彼らが落ちていった先のひとつが深山渓谷だ。ハイキングコースを歩くと、両側は高い山に囲まれ、次々と滝が現れる。まるで、城壁に阻まれるような天然の要害そのものだ。敵が攻めてきた時は、容易に迎え撃てる。

 僧兵は元々、山に籠り山野を駆けることを得意とした。ごうごうと鳴る新田の滝は、僧兵たちの雄たけびに聞こえた。ここに新たな田を開いて新天地としたのだろうか。

(ニュース和歌山/2018年6月23日更新)

大上敬史さん作製「和歌山県の滝」で、県内の滝が紹介されています。