田辺市本宮町平治川の辺りは平家の落人が住んだと言われ、その血筋を引く美しい姫君がいた。
ある日、姫が滝に参籠していると、光源氏のような麗しい美男子が後をついてきた。姫は、たちまち一目惚れし、「どこの家のものか」と尋ねると、男は「武住のがまの滝に参る」とだけ答えた。
その日から男は姫の家に遊びに来るようになったが、夕方になると帰ってしまう。姫は、素性が知りたくて男の後をつけた。男は滝壺に着くと、その身を大蛇に変え、淵へ沈んでいった。
男が滝の主だと知り、親にそのことを話すと姫は病床に伏した。案じた身内が祈祷を施し、姫を遠くの里に逃がすことにした。すると、滝の主は怒り狂って連日、雷が鳴り響いたという。
(ニュース和歌山/2018年7月21日更新)
大上敬史さん作製「和歌山県の滝」で、県内の滝が紹介されています。