岩出市の備前交差点近く、淡いグリーン系の外壁がさわやかな「CAFE884(ハチハチヨン)」。意味深な店名の数字は〝は・や・し〟の語呂合わせだ。開店から3ヵ月あまり、オーナーシェフの林勇記さん(36)が作る看板メニューのハヤシライスは、早くも根強いファンが付いている。

隠し味は味噌

──看板メニューはハヤシライスです。

 「元々、ハヤシライスが好きというのもありますが、『884で林が作るハヤシライスっておもしろい』と自分の中でしっくり来たんです(笑)。ベースのブイヨンを取るのに肉や野菜を5時間以上煮込みます。この後、トマトとデミグラスソースで仕上げます。企業秘密なので詳しくは言えませんが、試作を繰り返す中で深みとコクがもう1つほしいと、加えているのが、とある味噌。味噌は様々な種類を試しました。和歌山ですから、金山寺味噌も含めて。目指したのは〝毎日食べられるハヤシライス〟です」

──確かにコクがありながら、さっぱりしていますね。

 「はい、優しい味を心がけています。一方で、肉はがっつり食べてもらいたいとの思いも。ノーマルなハヤシライスのほか、ボリュームのあるヘレカツをのせたもの、ローストビーフをたっぷりトッピングしたものも。ローストビーフに使うのはチャックテンダーという前足のあたりの部位です。赤身でさっぱりしていながら、肉のうま味がしっかりとあり、ワイルドな感じが気に入っています。もう1つ、『ベジハヤシライス』は、地元産の野菜を中心に、ラタトゥイユ風に煮込んだり、オイル炒めした野菜がたっぷりの一品。野菜はその日の仕入れによって日替わりです」

──サンドイッチも力を入れているそうですね。

 「〝おかずサンド〟と〝おやつサンド〟に分けています。おかずサンドはやわらかく、ちょっと懐かしい感じがするコッペパンで、具材はハヤシライスと同じトンカツ、またはローストビーフです。おやつサンドはハンバーガーに使うような丸パンで、あんバター、あんバターチーズ、みかん、季節のフルーツの4種類を用意しています」

九州での出合い

──カフェを始めようと思われたのは。

 「以前、会社勤めしていた時、転勤で九州へ行きました。慣れない土地、友人もいない。そんな時、小さなカフェに出合いました。流れる音楽、置いている本、そしてスタッフがつくる空気感。そこが唯一の居場所でした。その後、別のカフェに勤め始め、しばらくして高校時代の友人で、故郷の岩出市にあるフェイバリットコーヒーで店長をしていた西田武史さんと意気投合し、4年前に和歌山へ戻りました。そこで腕を磨き、今年5月に自分の店を持ちました。

──開店3ヵ月です。

 「印象深いのは、年配の方にいただいた言葉です。たまに来てくださる方で、その日は混んでいて、席が空くまで時間がかかってしまうと伝えると、『きょうは口がハヤシになっているので、待ってるわ』と言ってくださった。うちのハヤシを食べに来てくれているんだと心にしみました」

──ハヤシライス専門店として定着しています。

 「それは非常にありがたいんですが、何時間でも過ごせるカフェとしても利用してもらいたい。コーヒーは九州で出合った店から、しっかりとコーヒーの味がありながら、あっさりが同居しているこだわりの豆を取り寄せていますし、インテリアにも凝っています。食事を提供するだけでなく、人生をより豊かに過ごせる場として、定着するとうれしいですね」

写真=ハヤシライス(1134円。11時〜14時のランチタイムはサラダ、スープ、ドリンク付き)

【CAFE884】
岩出市高瀬66-2 リーベン・ヴィラ山田1階
11時〜18時(LO17時)
日曜と第2月曜休み
☎0736-67-8889

(ニュース和歌山/2018年8月22日更新)