昔、信心深い娘が、病気の父のため、観音様に願掛けをしていた。ある夜、観音様が枕元で「山に住む大猿がおまえを嫁にしようと狙っている。襲われたら水がめの中に隠れなさい」と仰った。
別の日、大猿が家に入ってきたので、娘は慌てて水がめに隠れたが、それを見た猿は水がめごと担いで家を出た。途中、娘はかんざしを川に放り投げ、水がめから出て、「ここで待っているから、かんざしを拾って」と言った。猿が水がめを背負ったまま淵に飛び込むと、たちまち水がめに水が入り、猿は溺れ死んだ。
その後、父の病気は治り、2人はこの滝を「おいつぼの滝」と呼んで祈りを捧げたという。
新しい道のそばを流れ、つい見落としてしまうかわいい滝壺だ。
(ニュース和歌山/2018年10月20日更新)
大上敬史さん作製「和歌山県の滝」で、県内の滝が紹介されています。