昔、狩人が滝に近づくと、美しい女が現れた。見ると、手招きしており、奇怪だと危険を感じた狩人は逃げだした。ところが、女はどこまでも追ってくる。「南無阿弥陀仏」と叫んで矢を射ると、雲のように掻き消えた。

 里に逃げ帰った狩人はこの事を話し、仲間と共に血の滴りをたどった。血は滝に続き、滝壺に大きな蜘蛛が浮かんでいた。これは、この滝の主であったかと祈りを捧げた。以来、この滝に主はなく、空の滝となった。

 『紀伊続風土記』に、「懸流高四丈幅五尺許其北に相並ひて又瀑布あり。其状上は二條雙ひ懸り下にて合て一條となる。(中略)葛城峯中所々瀑布あれとも唯此地の瀑布に其魁となすへし」とある。別名、カラ滝。今も滝の主は不在なのだろうか。

(経路…高野線紀見峠駅から根古川沿いを上る)

(ニュース和歌山/2019年1月12日更新)

大上敬史さん作製「和歌山県の滝」で、県内の滝が紹介されています。