4月に改正出入国管理法が施行され、今後増加すると見られる国内在住の外国人。言葉のハンディを抱える外国人にとって、地震や津波、風水害は命が危険にさらされる大きなリスクとなる。和歌山県国際交流協会などは遠隔地にいる外国人向けの通訳支援訓練を実施し、和歌山市の日本語教師、古田朋美さんは外国人向けに考えられた「やさしい日本語」の普及に取り組んでいる。

 

ネットで遠隔通訳〜国際交流協会など初の訓練

 8月19日、和歌山市と那智勝浦町で実施した訓練。同町の避難所で外国人が困っている想定で、インターネット回線を使った多言語での通訳支援を行った。企画した県国際交流協会の出口博之局長は「地震経験がなく、避難指示などの言葉も理解できず、避難所での過ごし方も分からない外国人もいる。災害時に外国人が落ち着いて過ごせる環境になれば」と強調する。

 県内に住む外国人は6600人で、約半数が和歌山市在住。近畿各府県の国際交流協会などでつくる近畿地域国際化協会連絡協議会は毎年、災害時の外国人支援に関する研修を行っているが、今回、和歌山での実施にあたり、「海岸線が長く、支援が届きにくい地域の外国人をサポートできるように」と遠隔通訳の訓練を企画した。

 この日は、県南方沖で地震と津波が発生し、避難所にいる外国人の通訳を那智勝浦町から依頼された場面を想定した。まず、各府県の英語、中国語、フランス語、フィリピノ語が堪能なスタッフが同市に災害時多言語支援センターを開設。次にインターネットで同町と中継し、外国人から「パスポートが津波に流された」「大使館に連絡したい」などの相談に応じた。

 出口局長は「各府県から集まったメンバーはそれぞれ率先して作業に取り組み、スムーズに運営できた。外国人に隣人として手を差し伸べ、親身になって話や悩みを聞けるよう訓練を重ねてゆきたい」と話していた。

 

やさしい日本語普及を〜古田朋美さん 毎月講座開催

 「無事→生きている」「余震→後からくる地震」──。外国人向けに考案された「やさしい日本語」の講習会を3月から毎月末、古田朋美さんが開いている。通訳士や教師など外国人と接する機会が多い日本人が受講しており、「日本語で報道される災害情報を理解できない外国人が多い。日本人が使う言葉を少し工夫することで、外国人が安心して暮らせる社会になる」と意気込んでいる。

 阪神・淡路大震災をきっかけに、災害時に外国人が適切な行動を取れるよう、弘前大学の佐藤和之教授が考案したやさしい日本語。日本語教師が外国人に使う「ティーチャートーク」を基に考えられ、現在、自治体が作る日本在住の外国人向け情報誌や、行政窓口などで使われる。

 20年前から留学生に日本語を教える古田さんは、教室では日本語で話せるのに、会社や街中に出ると言葉が理解できず悩む生徒を見てきた。入管法改正で外国人が増える中、受け入れる日本人が簡単な単語を意識して話す必要性を感じた。

 「はっきり、最後まで、短く」が基本で、カタカナ外来語、二重否定やあいまいな表現は避ける。講習会では、東日本大震災時にラジオで放送された災害情報を例文に、聞いてすぐ分かる内容に言い換える練習を行う。

 古田さんは「外国人観光客に対してもやさしい日本語は活用できる。国際交流に必要な言語は英語だと思っている人は多いが、外国人と日本語で話すことでコミュニケーションが広がることを知ってほしい」と願う。

 次回は9月29日㊐に和歌山市十番丁のシェアオフィス市川ビル5階で開催。詳細は古田さん(frttomomi@hotmail.com)。

(ニュース和歌山/2019年8月31日更新)