妖怪をこよなく愛する漫画家、マエオカテツヤさんによる人気連載「妖怪大図鑑」。2020年初回となる今回は、妖怪の代表格、天狗にまつわるちょっといいおはなし2つを紹介します。
其の百八拾〜興国寺の天狗
幸福度:5
山の妖怪
出没地域:由良町
昔、由良町の興国寺を旅の僧が訪れ、「この寺を開いた上人は法燈(ほっとう)であろう。法は〝水が去る〟と書き、燈は〝火が登る〟と書く。ゆえに、いくら建てても火事を出す。わしは赤城山に住む杉の坊という者だが、わしに任せれば、後々まで残る寺を建てよう」と住職に言い置いて去っていった。そして、何年か経って、半信半疑ながら、住職が赤城山を訪れると、杉の坊は「○月○日に建てよう。しかし、和尚も村人も里に下り、日暮れから一切、灯りをつけぬ事と外歩きをせぬ事、よいな」と約束させた。そして約束通り、一晩のうちに立派なお堂を完成させた。これはとても人間の仕業じゃない、きっと天狗さまが建ててくれたのだと、村人たちはここに天狗を祀ったという。
其の百八拾壱〜天狗の手形
幸福度:4
山の妖怪
出没地域:海南市
今から400年も昔、海南市の福勝寺境内にある大きな杉の木に、天狗が棲んでいた。とにかく、いたずら好きで、木から下りてきては、村人たちに悪さばかりした。困り果てた人々は、天狗に悪さをやめさせるよう観音様にお願いした。ある日、いつものように天狗が木から下りて来ると、そこへ観音様が現れて、天狗をやさしく戒めた。反省した天狗は、本堂の縁側に手をついて謝ったという。それから天狗はいたずらをやめ、村人たちの仕事を手伝ったり、子守をしたりと親切にして、村人に愛されたのだそうだ。現在も縁側には「天狗の手形」が残っている。
(ニュース和歌山/2020年1月4日更新)