今回の質問は和歌山市のやすナツ子さんから届いた「和歌山県庁はなぜあんなにおしゃれなの? ほかの役場の建物は普通なのに…」を調査します。

 県庁といえば、黄褐色の外壁タイル、縦長のアーチ窓、車寄せのある入り口が特徴です。シンプルなようで細かな装飾が施されているのに気づき、改めて見るとなるほど、おしゃれですね。

 書籍『和歌山県庁本館』の著者の一人、和歌山県建築士会の中西重裕副会長に聞きました。


 

どの時代も飽きないデザインだから

 「和歌山県庁はなぜあんなにおしゃれなの?」。県建築士会の中西重裕副会長は「華美ではないがどの時代でも飽きないデザインは、設計した人のこだわりが詰まっている。文化財として価値があり、おしゃれとの表現はある意味、的確」とのこと。

 完成した1938年は不景気に加え、政情不安定。建設にあたり重視したのは派手さではなく、地震や火事に強い頑丈さでした。当時、最先端だった鉄筋コンクリート造は、和歌山大空襲の焼い弾にも耐え、戦後の復興を支えました。

 一方、華美でない方法で権威や威厳を表す工夫もされています。国会議事堂やヴェルサイユ宮殿のような左右対称の外観、屋上や正面玄関のひさしを飾る素焼きのテラコッタ、しっくいの技法を用いた天井と壁の接続部分の装飾など、近代建築の先がけでした。

 2013年には国登録有形文化財になりました。近年、都道府県庁舎が建て替えられる中、戦前から現在も使われるのは和歌山含め全国で9件です。

 身近な文化財へ目を向けると、思わぬ魅力や歴史を発見できますね。

(ニュース和歌山/2020年8月8日更新)