「小さいころから父が釣ったタイが一番好きです」──。昨年4月、和歌山市加太にオープンした、シーフードとコーヒーが楽しめる「セレーノ」の店主、西川晴麗さん(30)は、加太で一本釣り漁をしている父とその漁師仲間に支えられ、新鮮な旬の魚を提供しています。地元の豊かな食材への思いと、加太へのあふれる愛を聞きました。

 

新鮮魚を演出

──料理に使う魚は?

 「すべて加太の漁港で、その日水揚げされた魚です。主に父が一本釣りしたタイやハマチで、それ以外は父の漁師仲間が捕った魚です」

──今の時期は?

 「タイ、ハマチのほか、ブリの幼魚ツバス、タコが多いです。夏場はイカやサザエ、イシダイ、これから寒くなってくるとスズキやブリも出します。春に採れるわかめやひじきなどの海藻類もおすすめですよ」

──魚はご自身で選ぶんですか?
 
 「ベテラン漁師である父の目利きを信じ、全て任せています。良い食材をさばいてきれいに盛り付け、視覚的に演出するのが私の仕事です。また漁師の皆さんは、タコツボ漁や刺し網漁、一本釣りなど知恵と体力を振り絞り、時に命がけで魚を捕ってくることを知ってほしくて、お皿に並ぶ魚がどんな漁法で捕ったのか、お客さんに説明しています」

 

古民家で癒やし

──なぜお店を?

 「元々は6年間、小学校の養護教諭をしていましたが、『いつか自分の店を開きたいな』と漠然と考えていました。2年半ほど前、加太にできた東京大学生産技術研究所地域ラボから、『一緒に加太を盛り上げないか』と声をかけていただきました。その向かいにあった築100年の古民家を好きに使っていいと言われ、また夫から、『夢を叶えるチャンスだから』と背中を押してもらい、店を開きました」

──飲食店にしたのは?

 「地元加太を盛り上げるにはどんな店がいいかを考えたら、やっぱり魚は欠かせない。加太ではいろんな魚が捕れると、たくさんの人に知ってほしいと思ったんです。ただ、家庭料理しか作ったことがなく、飲食業も経験がない。だから、手を加えるよりも新鮮な魚本来のおいしさを楽しんでもらおうと、数量限定で日替わりのお刺身を並べた「海の恵み定食」を提供しています。また、軽食メニューに、魚の揚げ物を挟んだフィッシュサンドがあります。具材はアジやサバなど、加太の魚で、季節によって変わります。バンズは白と黒があり、白は普通のパンで、黒は紀州備長炭の粉末を練り込んでいます」

──店名の由来は?

 「セレーノはイタリア語で『晴天』の意味です。日の出と共に漁に行く、漁師町をイメージする言葉と、私の名前に『晴』と『麗』が入っているので、この名前にしました」

──今後は?

 「加太は若い人から年配の人までいろんな世代が来る観光地。小路や裏路地に入って町歩きを楽しみ、散策に疲れた時は、店に寄って地元のおいしい魚やコーヒーを味わってひと休みしてもらう。観光客や地元の人に愛される、この町の休憩所みたいな存在になりたいですね」

 

【セレーノ】
和歌山市加太1455
㊋㊌休み
11時半〜17時
☎073・499・7017
※駐車場有り

(ニュース和歌山/2020年10月3日更新)