漁具、流木、プラスチック…。漂流ごみや廃品を使い、色彩豊かな立体作品を制作するのが和歌山市の石田真也さん(35)です。全国のイベント装飾のほか、現在、NHK・Eテレの「天才てれびくん」で小道具を担当。「廃品同士が組み合わさると、想像を超える。作品として新たな命と価値観を生み出したい」と話します。
土地を表現
──なぜ廃品を材料に?
「小さいころから道端に落ちているものを拾うのが好きでした。片方しかない眼鏡フレームやチラシの端など、単純に素材として魅力的です。廃品は土地を表し、場所が変われば廃品も変わる。自分が介入することで、廃品の命が延び、物が生まれてから無くなるまでのサイクルにズレをつくりたいです」
──ひかれる点は?
「廃品同士を掛け合わせたときに起こる化学反応と出合えることです。例えば昨日出た町の廃品と、何年間も漂流したプラスチックが作品の中で一体化された時、思わぬ相乗効果を生みます。作品を通して廃品を動かせ、新たな価値を生むことが目的です」
──手に持つ作品(写真)の素材は?
「タイトルは『祭鏡16』で、縁はハンガー、真ん中はイカ釣りに使う漁具と浮きです。このようなパーツをいくつも作り、流木や電飾装置を加え、展示会場で立体的に組み合わせます。時には数㍍にもなることもあります」
祈りの対象
──制作に一貫するものは?
「どの作品も〝みえない力〟がテーマにあります。京都の芸術大学在学中に訪れたタイやインドで、人々の生活に根付く信仰心に強くひかれました。心の中に祈りの対象があることで、見えない力が働いていると感じたんです。自分は特に宗教を持たない人間なので、色んな文化になじむことができる。その土地に生きる人の支えとなる存在を表現したいです」
──こだわりは?
「訪れた土地に滞在し、廃品を収集して制作することです。日本以外ではタイ、カンボジア、デンマーク、中国、台湾で行いました。昨年は、太地町で行われた芸術イベントの紀の国トレイナートに参加。3週間滞在し、鯨をテーマに取り組みました。生態や歴史を学んだ上での作品づくりは初めてでした。お面で鯨を表現した作品は、黒い浮きやバイクのフロント部分、サドルを組み合わせました。そのお面に体をつけ、地元小学生が海をイメージして描いた絵と鯨踊りに使う法被を着せ、太地への思いと未来への希望を込めました」
──他にどんな活動を?
「今年4月からはEテレの『天才てれびくんhello』で、司会のみやぞんさんが使う小道具を担当しています。彼の役柄が廃品で発明品を作るエンジニアで、私に白羽の矢が立ちました。台本に合わせての創作は新たな挑戦です」
──これからは?
「11月に和歌山市民図書館で作品展を行います。何を出展するのかは、来てのお楽しみ。地元の人たちに作品がどう受け入れられるのかワクワクしています」
石田真也作品展
11月7日㊏〜30日㊊、和歌山市民図書館2階。午前9時〜午後9時。詳細は石田さんHP。
(ニュース和歌山/2020年10月17日更新)