《回答者》
◆消化器外科・一般外科
福外科病院 消化器外科専門医・大腸肛門病専門医・消化器病専門医
福 昭人院長
直腸肛門の感染症です。抵抗力が低下していると直腸と肛門の境界にある肛門小裔(しょうか)から細菌が侵入し、肛門括約筋にある肛門腺に感染することがあります。炎症がひどくなって、あちこちに波及し、膿がたまった状態を肛門周囲膿瘍(のうよう)といいます。これは抗菌剤で軽くなることもありますが、完治はしません。悪化すると発熱と肛門の痛みが強くなります。さらに我慢すると膿瘍が破裂し、直腸、肛門と皮膚が瘻管(ろうかん)というトンネルでつながり、難治性の痔瘻となります。こうなると、すぐに切開排膿など処置をしないと、糖尿病など基礎疾患のある方は重症化することがあります。
ただ、痔瘻になれば痛みや発熱は軽くなりますが、排膿で下着を汚したり、排膿が悪くなると痛みや微熱が出たりするため、手術が必要です。一般に肛門機能を損なわないように括約筋温存手術が行われます。外来手術として痔瘻結紮(けっさつ)術もありますが、長期通院を要するため、深部痔瘻でなければ一長一短です。なるべく早めに専門医に相談して下さい。
(ニュース和歌山/2020年10月25日更新)