《回答者》
◆脳神経外科
貴志川リハビリテーション病院 亀井 一郎院長

 「特発性正常圧水頭症」のことだと思います。〝水頭症〟は、脳内の「脳室」という袋状のスペースにある脳脊髄液という無色透明の液がスムーズに流れずにたまってしまい、脳室が大きく膨んで内側から脳を圧迫してくる病態です。

 そのために、歩きにくい、尿意がわからないために漏らしてしまう、認知症などの症状が徐々に出てきます。くも膜下出血の後や髄膜炎などの後に起こってくることが多いのですが、そのような疾患の経歴がなくても水頭症が起こりうることがわかってきました。

 「特発性」とは「原因がはっきりしない」、あるいは「特定できない」という意味です。また脳室が徐々に膨らんでくるので、脳室内の水圧が急には上昇しないため「正常圧」という言葉がつきます。

 高齢者に多く、単に〝老化〟のせいにされてきたこともあるかと思いますが、特発性正常圧水頭症であれば治療の方法があります。

 脳脊髄液を脳からお腹の中など他の場所へ流す道をつける手術をすれば、一挙に解決します。脳神経外科医にとって決して難しい手術ではなく、1時間内外で終了します。術後に短期間のリハビリを行えば、さらに有効です。

(ニュース和歌山/2020年10月25日更新)