50歳代の主婦です。昔から頭痛や肩こりに悩まされ、薬を飲んだり湿布を貼ったりしてやりすごしています。ところが先日、「あごのずれを治すと痛みやこりが改善し、心の不調も軽減する」と聞き、驚いています。あごと身体の痛みに、どんな関連があるのですか。

…   …   …   …   …   …

《回答者》
◆歯科
吉村歯科医院 吉村 義孝院長

 人間は直立二足歩行を行うために、あごで頭蓋と体全体の重心バランスをとっています。

 しかし、あごがずれると、頭と、頭を支える頸椎もずれようとし、さらに、頸椎のずれを防ごうとして頭・頸部の筋肉が無理な働きをするようになります。頭・頸部の筋肉が無理に働いて不自然に硬直すると、脳や首回りの筋肉が過度に緊張するため血流障害をきたし、頭痛などの症状が起こります。また、あごのずれは脊柱の歪みを引き起こし、首や肩のこりを始め、胸椎や脊椎の湾曲による様々な不調を招きます。加えて、上半身のずれが原因となり、骨盤や股関節がひずんだり、足やひざ、足の筋肉にこりや痛みを引き起こす場合もあります。それは、子どもも大人も変わりません。

 このように、あごは、直立二足歩行をする人間の全身の「要」の役割を担っているのです。

 

かみ合わせの悪さは万病のもと〜咬合医療で心身の不調を軽減

 あごのずれとかみ合わせは、密接な関係にあります。

 かみ合わせは、①歯とあごの形 ②あごの位置 ③あごの運動、の3つに分類されます。かみ合わせが悪い状態とは、②の「あごの位置」がずれていることを言い、そのずれは万病のもとになります。あごをよい位置に是正すると、かみ合わせがよくなるだけでなく、首や肩のこりをはじめとした身体の不調から、キレる、イライラするなどの心の問題まで、様々な不定愁訴が軽減するといわれています。

 なかでも近年、注目を集めているのは、花粉の症状についてです。花粉症はカゼをひいているわけでもないのにくしゃみや鼻水、鼻づまりが発作のように起こりますが、これら免疫系の症状も、あごのずれを治すことで改善が見られることが報告されています。つまり、あごのずれを治すと筋の緊張がゆるみ、圧迫されていた血管に血液がスムーズに流れるようになり、脳が活性化します。脳の重要な機能のひとつに免疫機能がありますが、咬合医療(かみ合わせの治療)によってこの免疫力が高まるため、免疫疾患であるアレルギー性鼻炎や花粉症に効果があると考えられているのです。

 咬合医療は、身体的な症状をはじめ心の健康、美容にも効果があると期待されています。体調がスッキリしない、気持ちが晴れない、アレルギー症状が続くなどでお悩みの方は、一度、あごのずれについても確認されてみてはいかがでしょうか。

(ニュース和歌山/2020年10月24日更新)