自家農園で育てたイチジクの加工品開発に力を入れる海南市の青木農園、青木秀文さん(52)。木に成ったまま完熟させた果物を丁寧に加工することで甘みや栄養を詰め込んだドライフルーツは全国の百貨店や高級スーパーに並びます。ドライフルーツの楽しみ方と今後の展望を聞きました。

 

素人からの挑戦

──なぜ加工品開発を?

 「父が体調を崩したのを機に4年前、実家の農園を継ぎました。イチジクやキウイフルーツ、かんきつ類を栽培しています。和歌山はイチジクの生産量が全国2位。しかし、一番甘い完熟は傷みやすく、ほとんど市場に出ません。前職で長年赴任したイタリアではドライフルーツが普段の生活にあったのを思い出し、これなら一年中楽しんでもらえると始めました。素人からの挑戦でした」

──こだわりは?

 「見た目と味です。木に成ったまま完熟させたイチジクは生でも皮ごと食べられます。一気に乾燥させると変色し栄養素が壊れてしまうので、専用の機械で湿度をコントロールし、水分を循環させながら時間をかけ、甘みや栄養をギュッと凝縮させます。低温で6時間、高温で7時間、湿度を変えて7時間、最後に殺菌のため高温で2時間。地元海南市の桃やいちご、青森のりんごなど、知り合いの農家から仕入れた果物も使います。いずれも砂糖は加えません」

──栄養価が高いドライフルーツは健康や美容の点で注目されています。

 「朝食のヨーグルトに混ぜたり、小腹が空いた時のお菓子代わりにしたり、色んな場面で食べられるのがいいようですね。特にイチジクはポリフェノールが多く、繊維質がお通じに良いと求める女性が多いです。糖分が高くてカロリーが摂取しやすいので、山歩き用にも需要があります」

 

イチジクを発信

──人気商品は?

 「ドライフルーツを水に漬けたフォンダンウォーターを作るためのボトルセットです。2年前に売り出したところ、砂糖なしで果物の甘みや香りを楽しめると好評で、今では全国の百貨店や大手通販で販売しています」

──ほかにオススメは?

 「新商品の完熟イチジクジュースです。みかんや梅のように和歌山はイチジクもすごいと知ってもらいたいと、搾り技術を持つ和歌山市の会社と2年半かけて開発しました。果汁が少ないため本来はジュース加工に向かない果物ですが、繊維だけを取り除くように搾り、プチプチした粒の食感が楽しめます」

──今後は?

 「48歳で農園を継いだため、何かするなら少しでも若いうちにとすぐ加工品の開発を始めました。今後は開発した商品の品質向上に取り組むと共に、より良い果物づくりに向け、本業の農園に力を入れていきます。また、イチジクジュースの安定供給には自分たちの農園だけでは足りません。他の農園からも集め、和歌山のイチジクを発信し、地域活性化へつなげたいです」

【青木農園】
海南市鳥居342
HP「AOKI FARM & DELI
ドライフルーツは和歌山市のキーノ和歌山、休暇村紀州加太、海南市のとれたて広場で販売。イチジクジュースは100本限定でネット販売のみ。注文はFAX(073・482・3902)で。

(ニュース和歌山/2020年11月7日更新)