人皆は 萩を秋と言ふ よし吾は 尾花が末(うれ)を 秋とは言はむ 作者未詳

 「幽霊の正体見たり枯れ尾花」と有名なことわざがありますが、この「尾花」とはススキのこと。怖い怖いと思っていると、枯れたススキでも幽霊に見えてしまうとの意味です。何事に対しても、過度に疑心暗鬼になってはいけませんね。

 ススキはイネ科で、お月見にはハギと共にお供えするおなじみの植物です。和歌山県では生石高原が有名で、シーズンには車の大渋滞が起こります。確かに生石高原のような群生を眺めるのは最高ですが、ススキは街中でも空き地でも、それこそどんな所にでも生えます。ただし、すぐに刈られてしまう場合も多く、郊外に行かないとスケールの大きな株を見るのは難しいでしょう。紀伊風土記の丘でも至る所で目にします。写真は大日山35号墳で撮ったものです。

 ところで最近、奈良や大阪へ行く自動車道沿いで、ススキの2倍ほども背丈がある植物をよく見かけるようになりました。ヨシススキと呼ばれる外来植物です。両者が混じって生えていることが多いので、機会があれば見比べてください。

 万葉集にはススキを詠んだこんな歌があります。

 「人皆は 萩を秋と言ふ よし吾は 尾花が末を 秋とは言はむ」

 みんなが秋を代表する花はハギだと言うのなら、私はススキの穂こそが秋の代表だと言おう…。ちょっとへそ曲がりな歌ではありますが、カラフルなものばかりに目を奪われることなく、モノトーンの植物にも風情を感じる作者の豊かな感性がにじみ出ていますね。 (和歌山県立紀伊風土記の丘、松下太)

(ニュース和歌山/2020年11月21日更新)