僕たちは、今年3月、自転車世界一周に出発しました。自転車で世界を回るなんて、非現実的に思えるかもしれませんが、自転車の一漕ぎ一漕ぎで、次の目的地、次の街、次の国、次の大陸に向かっています。
このような挑戦をする人は屈強な肉体や語学能力を持っていそうですが、残念ながら僕たちはそうではありません。ただ、色んなものを見てみたい、やってみたいという好奇心は人一倍強く、はじめの一歩を踏み出しました。そんな僕たちが世界各地で体験したこと、感じたことを紹介していきます。
和歌山を出発し、最初の国、アメリカへ。空港でフル装備をセットし、そして、はじめの一漕ぎ目。「む、無理、重すぎる!」。車体と荷物を合わせて40キロの自転車は予想以上に重く、左右に揺れ、うまく乗りこなせない。しかも、初めての右車線、空港は一方通行だらけと慣れないこと尽くしで散々な初日でした。
しかし、不思議なことに重さは3日で順応し、それと同時に生活リズムもできてきます。テント生活は日が昇れば行動し、日が沈めば寝るという原始的なものです。
自転車旅行の醍醐味は現地の方との交流です。「捨てる神あれば拾う神あり」と言いますが、まさにその通りで、逆風、猛暑、急な坂道、体調不良といった逆境時に現地の方に助けられました。
中でも、猛烈な逆風で前に進めなくなっていたときに助けてくれた猟師さんとの出会いは忘れられません。「七面鳥を取り逃がしたが、友人が二人もできた」と家族同然に迎え入れ、弓矢での鹿の仕留め方、銃器の扱い方(写真 このページ上)、鹿のさばき方などを教えてくれました。僕たちにとっては初めてのこと尽くし。特に、鹿をさばいたことは、生き物が食になるまでの過程を学べ、僕たちが生きているのも様々な犠牲の上で成り立っていることを再確認できました。
命を繋いでくれている食べ物、助けてくれた人々への感謝を忘れず、日々をしっかり生きなければと思います。
写真 このページ下=逆風の中助けてくれた猟師(中央)と
(ニュース和歌山2014年7月19日号掲載)