子ども向けの演劇やコンサートなどを企画する「子ども劇場県センター」が7月1日、特定非営利活動促進法(NPO法)に基づくNPO法人として県から認証された。県内では第1号。岡本瑞子理事長は「会として基本的な人格を持てたように思う。責任重大だが、一層頑張りたい」と話している。(1999年7月8日号より)

99年3月、県にNPO法人格取得を申請する岡本理事長(右)

 NPO法人の活躍が目立った2000年代。まちづくりや子どもの健全育成、環境保全などの分野で活動する非営利の市民団体に法人格を与えるNPO法が1998年12月に施行されたのを受け、県内で初めてのNPO法人が誕生したのが99年だった。この年を中心とするNPO草創期を追った。

広がる活動の幅

 党を超えた議員立法でできたNPO法。90年代、全国で市民活動を展開する人たちが国会議員と議論し作り上げた。当時、議員への請願活動を行った一人が、右の記事に登場した子ども劇場県センター(現・子どもNPO県センター。99年1月までは県子ども劇場おやこ劇場協議会)理事長の岡本さん(70)だ。
 子ども劇場の全国組織が東京で開く勉強会に参加したほか、議員にNPOの重要性を説明して回った。「アメリカでは市民活動を行う団体に寄付した企業は税制が優遇されると聞いた時は目から鱗が落ちた。奇特な企業だけでなく、寄付が普通になっている社会を目指したいと思いました」

2001年、わかやまNPOセンター
設立時の会議で(同センター提供)

 98年、NPO法が成立。税制優遇制度は盛り込まれなかったが、「一歩前進でした」。翌99年7月、子ども劇場県センターは法人格を取得した。同年12月、新たな取り組みとして、子どもたちの悩みに24時間体制で耳を傾ける電話相談「チャイルドライン」を実施。「法人格がなくてもできた。しかし、認証を受けたことが社会的な後押しとなり、大事な取り組みだと堂々と言えました」。2002年からは和歌山市の委託を受け、子育て中の親と子が集えるキッズステーションをぶらくり丁に開設。法人格取得を幅広い活動につなげた。

変革期の次へ

 99年10月には「市民活動ネットワーク和歌山」が設立された。NPOや市民活動を行う人たちをつなぐため、情報紙を発行し、講座やフォーラムを開催。岡本さんやボランティア活動に取り組む人、大学教授らと輪は広がった。その一人、木野学さん(74)は「NPOと言っても、まだ『日本パチンコ協会?』と言われた時代。NPOを根付かせるため、徹夜で議論することも多かったですね」。同ネットを母体に、NPOを支援するためのNPO「わかやまNPOセンター」が01年に立ち上がった。
 木野さんが理事長を務める新和歌山NPOは、高齢者の健康維持に関する活動を行う。00年に法人格を取得し、07年から運営を任される県立図書館2階ふれあいルームでは陶芸や囲碁など5教室を開催。会員は300人以上で、年間にのべ1万人以上が参加するほど活動は順調だ。一方で、木野さんが課題に感じるのが組織の継承。わかやまNPOセンターの志場久起理事(37)も「今はNPOの変革期。10年、15年選手が出てきて、代替わりの時代」と見る。
 県内のNPO法人は15年間で371に。NPOとの言葉も広く知られるようになった。岡本さんは「寄付をしたくなるような活動を各NPOができているかどうか。そこが次の段階へのステップだと思います」。
 草創期から変革期、そして次の時代は──。

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ニュース和歌山2014年9月6日号掲載