◆脳神経外科
今村病院 今村 和弘院長
A. 30歳代の男性です。4〜5カ月前、運転中に玉突き事故に遭い、それ以来、頭痛が続きます。むち打ちから来る頭痛でしょうか? 病院で診察してもらっても「気のせいでしょう」と言われます…
交通事故やスポーツでのケガ、転んで頭をぶつけた後にも頭痛は出てきます。痛みを周囲に訴えても、「軽い事故なのに」「ぶつかったぐらいで」などと言われ たりもします。しかし、車対車の事故ならば約1㌧同士の衝突ですし、人間対人間でも何十㌔もの体がぶつかり合うのですから、思った以上に頭や首への影響は 大きいのです。
先日行われたフィギュアスケートの大会では、日本人選手が他国の選手と練習中にぶつかる事故が起こりました。幸い命に別状はありませんでしたが、結局、 車イスでの帰国となりました。一部では「あの時の衝撃は、ダンプカー同士の衝突に匹敵する」との声もあるほどです。
人間の頭の重さは、成人なら体重の約10%です。その重い頭が衝突で激しく揺さぶられるのですから、頭や首に影響が出るのは当然です。ただ、医療機関で 行われる頭や首のレントゲン、CT、MRIなどで骨折や変形が認められにくい場合、医師から「気のせい」と言われることも少なくありません。目で見えるも のは理解されやすいですが、目に見えないものは理解されにくいからです。
むち打ちによる頭痛は診断可能
しかし、「むち打ちによる頭痛」は、国際頭痛分類で「診断できる」と認められている頭痛です。片頭痛などの一 次性頭痛ではなく、二次性頭痛に分類されます。少しややこしいですが、首(頸椎)の屈曲または伸展を伴う頭部の、突然で十分に抑制できない加速または減速 運動がきっかけで起こるとされています。要するに、何らかの原因で、頭や首が「がっくん」となったことが原因で、頭痛が引き起こされるのですね。
むち打ちによる頭痛は、むち打ちをしてから1週間以内に出始めますが、その後の症状により大きく2つに分けられます。1つは「急性頭痛」で、むち打ちか ら3カ月以内に治まる頭痛を言います。もう一つは「持続性頭痛」で、3カ月を超えても続く頭痛を言います。いずれの場合もきちんと診断を受けた上で、治療 および症状にあったリハビリテーションやセルフエクササイズ、ストレッチなどを行う必要があります。まれに、むち打ちが原因ではない頭痛がありますので、 必ず病院で診察を受けるようにしましょう。
一方、「むち打ちで頭が痛い」と長期間痛み止めを内服していた患者さんが当院を訪れ、診察した結果、薬物乱用頭痛だったケースもあります(痛み止めの飲み過ぎは頭痛を起こします)。こうなると、治療も非常に難しくなります。
頭痛でお悩みの方は、早めに脳神経外科や頭痛外来を受診してください。