父が経営するうどん・そば店「飩庵(どんあん)」(和歌山市北土佐丁)で修業し、昨年9月に「飩庵製麺部」(同市小雑賀)を立ち上げた細尾雅昭さん(39)。安価ながら素材や製法にこだわったうどんが人気を集めています。手打ち麺と国産素材を使っただしに注ぐ情熱を尋ねました。(文中敬称略)
脱サラし修業
——実家は県庁前通り沿いにあるうどん・そば店、飩庵です。
細尾 小さいころからうどんをよく食べてきたと思われがちですが、一般家庭と変わらないと思います。ただ、味にこだわりがあり、本場四国やチェーン店で食べても、「もっとおいしいうどんがあるのでは」といつも感じていました。自分で納得できる味をつくり出そうと、うどん作りの道を選びました。
——店を開く前は。
細尾 大学卒業後、製薬会社で働いていました。元々、自分の店を持ちたいとの夢があったので30歳で脱サラ。居酒屋を始めようと思っていましたが、やはりうどんの味を極めたいと思い、父の店や、兄が経営する和食料理店で8年間修業し、独立しました。
理論と経験融合
——修業で得たことは。
細尾 職人としての技ですね。麺打ちは、部屋の温度や湿度、加える水や粉の温度が変わるだけで仕上がりが違ってきます。塩や水の加減、練り方が麺の硬さや味を左右するため、生地の状態を見極め、どうすれば良い麺になるかを父から学びました。勉強で得た理論と、経験を組み合わせて自分が求める味の試作を繰り返し、ようやくその味が出せるようになったように思います。
——飩庵との違いは。
細尾 父の店は落ち着いた雰囲気で、うどんは定評があります。自分の店のコンセプトは「気軽に行きやすい店」。価格や店の雰囲気に気を配り、うどん以外の丼物にも力を入れているんですよ。
甘さ引き立つ麺
——店で提供するうどんはどんな味ですか。
細尾 麺は、国産小麦を100%使い、その甘さを引き立たせました。コシがあるけれどもちっとした柔らかい食感です。ぶっかけうどんなど、だしの味があまり主張しないメニューで食べてもらうと、より分かると思います。一杯のうどんのために毎週来てくれるお客さんもいて、やりがいを感じます。
——麺以外にもこだわりがありますか。
細尾 カツオのうま味を利かせただしは化学調味料を使わず自然な味で、麺によく絡みます。また、飲み干した後、鼻を抜ける香りが良いと好評。麺とだし以外でも満足してもらえるよう、具の牛肉や豚肉は国産の上質なものを選んでいます。
——今後の目標は。
細尾 当たり前のように家庭などで食べられているうどんは味があまり意識されませんが、その中でも一番おいしいと思ってもらえる味をつくりたい。一口食べてすぐに「この味は!」と驚くお客さんの表情をまだ見ておらず、食べた瞬間にびっくりするくらいの味を目指し、追究を続けていきます。将来は店舗を増やし、和歌山でうどんといえば「飩庵製麺部」と思ってもらえる存在になればうれしい。おなかだけでなく、心も満たせる店にしていきたいです。
【飩庵(どんあん)製麺部】和歌山市小雑賀585-3。午前11時〜午後3時、5時〜9時。火曜定休。同店(073・499・4687)。
(ニュース和歌山2015年1月28日号掲載)