県内初のチーズ専門店「コパン・ドゥ・フロマージュ」(フランス語で「チーズの仲間」の意)が昨年11月、紀の川市桃山町調月の住宅街にオープンしました。店内で出迎えてくれるのは、〝チーズ版ソムリエ〟と呼ばれるチーズプロフェッショナルの資格を持つ宮本喜臣さん(41)です。商品の中には、和歌山の特産品で風味を加えたオリジナルチーズも。宮本さんの言葉にはチーズ、そしてふるさと和歌山への愛情があふれています。(文中敬称略)
風味付けは地元食材
——フランスにイタリア、オランダ…。ヨーロッパ各国のチーズが並ぶショーケースを見ているだけで楽しいですね。
宮本 常時、9ヵ国の約20種類をそろえています。食べ方や家庭での保存方法を直接説明した上で、チーズ用のセロファンにまいて販売するのがうちのスタイル。チーズに詳しくない方も試食を通してそれぞれの好みを探してもらってからご購入いただいています。
——商品名の横に「オリジナル」と書かれているチーズもありますね。
宮本 「BUKOのきんかん味噌漬け」はデンマークの上品なクリームチーズを、串本町のきんかん、海南市の酒造会社、中野BCの梅酒、白みそなどをブレンドしたものに漬け込んでいます。デザート感覚で楽しめ、「チーズケーキのよう」と好評で、山椒をかけると日本酒との相性が良くなります。「プティアグール赤山椒風味」は羊のミルクで作ったフランス産チーズを、有田川町特産の赤山椒で風味付けしました。ぶどう山椒を真っ赤に完熟させてから作る赤山椒は、青山椒より辛さがマイルドで、優しくアクセントを加えてくれます。販売する直前にお客さんの目の前で花びら状に削り、ライブ感も楽しんでもらっています。
和歌山の味 世界へ
——お客さんの笑顔が目に浮かびます。
宮本 会社員から転職し商売は初めてで不安もあり、開店時に宣伝はあまりしなかったのですが、おかげさまで近所の方はもちろん、和歌山市や遠くは神戸市からも来られます。多くの人においしさを知ってもらうため、高品質なチーズをお求めやすい価格で提供するよう努めています。中学生がお小遣いを持って買いに来ることも。飲食店にお勤めの方が「チーズの勉強をしたい」と来店するケースも多いですね。
——和歌山のチーズ好きにはうれしいお店です。
宮本 私自身、チーズはもちろんですが、和歌山が好きなんです。ふるさとの食材を世界に発信したいとの思いで地元食材を使ったチーズを開発していますし、実際にイタリアでオリジナルチーズのほか、有田川町のニッキや山椒などとの相性の良さを紹介し、チーズ熟成士や三つ星レストランのシェフからお褒めの言葉をいただいています。和歌山はチーズと合う食材が本当に多いんです。金山寺みそはフランスの代表的なチーズ、コンテと相性抜群ですよ。今は食用の紀州備長炭の粉と赤山椒をふりかけたブルーチーズを考案中です。今後、さらにヨーロッパと和歌山のマリアージュ(フランス語で「結婚」の意)を楽しめるお店にしていきたいですね。
宮本喜臣(よしとみ)…1973年、紀の川市生まれ。2003年、花びらの形にカットされたチーズの風味と食感に衝撃を受け勉強開始。知人のワイン会や酒屋での試飲会などでチーズを振る舞ってきた。08年にチーズプロフェッショナル協会の資格を県内で初めて取得。13年にフランスチーズ鑑評騎士の会から騎士の称号を受けた。
【コパン・ドゥ・フロマージュ】紀の川市桃山町調月769-136。営業は火・水・金・土曜の午前10時〜午後4時。0736・60・7175
(ニュース和歌山2015年2月11日号掲載)