トルコから飛行機でアフリカのタンザニアにやってきました。僕たちの旅のテーマの一つに登山があります。5000㍍級の登山は高山病や寒さに対する不安がありますが、それ以上に今まで体験したことのない世界への期待に胸が膨らみます。今回、アフリカ最高峰のキリマンジャロに登ってきました。
キリマンジャロ登山には様々なルートがあり、その中でマチャメルート5泊6日を選択。毎日テント泊で起伏もありますが、他のルートより景色の変化が楽しめ、徐々に標高を上げるので高山病リスクが少ないためです。日本の登山とは異なり、ガイド、コック、ポーターなどの同行が必要で、総勢13人のパーティで挑みました。日本では全ての荷物を背負い、ルート選択やペース配分、テント設営、料理を自分でしながら山頂を目指していたので、楽なものです。
1、2日目の樹林帯を軽快な足取りでクリアし、美味しい食事に満足し、体調も良好でした。3日目からは岩場地帯、4000㍍を越えると森林限界で、木がありません。ルートの起伏も予想以上に激しく、天気も次第に崩れ、雨に。4日目には雨が吹雪に変わり、白い大地へと変ぼうしました。天候は味方してくれませんでしたが、それに勝る装備を持っていっていたので、体調は万全でした。
山頂アタックの5日目。夜間登山のため、いつも以上に防寒対策をした結果…。あ、暑い、暑過ぎる。ガイドから「凍えるから立ち止まるな」と忠告されましたが、暑くてそれどころじゃありません。アタック時に寒さで凍えたという話は聞いていましたが、まさか暑くて途中で脱ぐことになるとは思いませんでした。
さらに登ること2時間、僕の体調に変化がありました。腹痛です。これは、毎日早朝に快便という習慣からくる便意でした。しかしここは山、欲しいときに欲しいものはありません。2時間程耐えましたが、治まる気配がないので、5500㍍を越えたところで野外で用を足すことを決意。脇道で気張っていると、激しい頭痛と息切れに襲われました。気張ると無呼吸になり、酸素が体内に供給されず、一時的に高山病に陥ったようです。マズイと思い深呼吸を繰り返すと気張れない。さらに、肌を出しているので寒くなってくるという負のスパイラルに陥りました。ふと空を見上げると満天の星空。感動と共にリラックスでき、事なきを得ました。
その後、高山病になることなく、一歩一歩着実に進め、アフリカ最高峰5895㍍、ウフルピークに到達しました。数々の氷河、真っ青で澄んだ空と空気を全身で感じ、そして、みんなの笑顔に安堵しました。
自転車の一こぎと登山の一歩は通じるものがあり、小さな一歩が確実に目的地に近づき、積み重ねが大きなものになります。その一歩が進歩につながると信じ、アフリカ大陸横断を決意しました。
写真上=アフリカ最高峰のキリマンジャロ 写真下=登頂した陽平(左)と妻の夕佳
(ニュース和歌山2015年3月21日号掲載)