キリマンジャロ登頂を果たし、アフリカ大陸横断の始まりです。まずはタンザニアから南アフリカへ。アフリカを自転車で走るのは少し不安でした。「黒人=見慣れない」のイメージを払拭(ふっしょく)すべく、キリマンジャロ麓の町に長く滞在しました。
高山病を防ぐために高所で順応するのと同様、町の喧騒(けんそう)や爆音の音楽、市場での交渉、衛生状況、停電、マラリア蚊、人々の視線や冷かしなどの経験を重ね、アフリカに自然と順応していきます。地元の食堂に行き、使いまわしの水で洗った食器に盛られたご飯を普通に食べられるようになってくると、慣れてきたなと感じます。ちなみにタンザニアのご飯は安くて意外にも美味しいのです。1食100円〜200円でお腹一杯食べられます。
主食はお米と、ウガリと呼ばれるトウモロコシの粉を湯で練ったもので、食感はオカラと団子の中間で味はあまりありません。副菜は、煮豆、トマトベースのスープに揚げた魚か鶏肉が入った料理や、ビーフシチューのようなものがあります。鶏は放し飼いで育っているので引き締まったワイルドな肉が美味しい! ただ、レパートリーが少なく毎日同じようなメニューだったので、飽きてしまうのが難点です。
自転車で出発すると、沿道にたくさんの子供たちが待ち構え、必死に手を振り、声を掛けてきます。ときには応援、ときには興味本位、ときには物ごい。休憩中も僕たちの周りに人だかりができ、まるでスーパースターになった気分です。このように自転車で走りながらアフリカに溶け込んでいきました。
しかし、どうしても順応できないこともありました。それは次の国、マラウイでの出来事です。タンザニアでは多くの人が元気に「ジャンボ!」とあいさつし、応援してくれたのに、マラウイでは小さい子供から大人まで「ギブミー」の連呼。1日に何百回も聞かされると気が滅入ります。要求もお金、水、ボトル、靴、服、自転車と様々で、面白いところではヤギをくれと言われたこともありました。
世界最貧国と言われるマラウイは世界中から支援を受けており、日本も数多くの青年海外協力隊(JICA)隊員を派遣しています。マラウイで会った隊員の話ではアフリカで一番派遣人数の多い国だそうです。「与えられる援助」に順応してしまい、援助してもらって当たり前、誰かが助けてくれるという意識が浸透し、自らの力で前進、努力しようとする意志を持たなくなっているように感じました。
結局、自分たちの力で何とかしようという「意志」がないといつまでたっても貧困からは抜け出せない。マラウイに限ったことではありませんが、現状維持は後退を意味し、現状を壊すリスクを負って成長しなければならない。世界は常に前へ前へと発展しているのだから、僕たちも順応、前進を繰り返さなければいけないと感じました。
写真 このページ上から=自転車の周りに人だかりができた、民泊でいただいた料理
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自転車で世界一周の新婚旅行に挑む辻陽平さん、夕佳さんの連載は奇数月の第3土曜号掲載です。次回は7月18日号です。
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(ニュース和歌山2015年5月16日号掲載)