白浜の名水「富田の水」で造る「ナギサビール」は今や地ビールの枠を超えた人気を集め、広く愛されるブランドとして地位を固めつつある。ビール職人の技と魂がこもるその味の特徴を〝やさしさ〟と語るワーソップ・カールさん(31)は醸造から販売までを手がけるアメリカ人スタッフ。ほれ込んだ豊かな味の秘密を教えてもらった。(文中敬称略)
名水「富田の水」で
——ナギサビールの歴史を教えてください。
カール 1994年の酒税法改正で、ビールの最低製造数量基準が下がり、地ビールブームが起こりました。社長の真鍋和矢が京都で飲んだビールのおいしさに感動し、「自分も造りたい」と思ったのが始まりです。社長は弟とアメリカへ渡り、カリフォルニア州のラグニタス社で造り方を学び、97年にビール造りを始めました。パチンコ屋を工場に改造し、タンクなど機材をアメリカから購入しました。最初は機材の故障があると、アメリカから修理に来てもらうなど苦労したようです。
——味の特徴は?
カール やさしさにあふれています。地ビールはホップをたくさん使って苦みを出したクセの強いものが多いですが、ナギサビールは味と香りがやさしいんです。地元の名水「富田の水」をもとにした麦芽100%のビールです。様々な品種の高級ホップを使い、香りを高めています。メーン商品はペールエールとアメリカンウィートの2種類で、期間限定品もあります。地ビール専門店だけでなく、東京や大阪の居酒屋で人気ですよ。和歌山市内でも多くのお店で提供頂いています。
麦芽の甘さに感動
——カールさんもその味に魅了されたのですね。
カール 留学で日本へ来て、アメリカの大学を卒業後、再び日本に来ました。将来を考え始めた時、広島の知人の店で初めて飲みました。ホップがほどほどで麦芽の甘さに感動しました。広島市内に醸造所を造るのが夢となり、知人が修業先にナギサビールを紹介してくれました。今はビール造りから醸造計画、販売と様々な仕事を担当しています。びんの栓も1本1本締めていますよ。
——実際にビール造りを始めてどうですか。
カール こんなに水にぬれる仕事とは思っていませんでした(笑)。水、酵母、麦芽、ホップとすべて生き物で、少しの条件の違いで味が変わります。それらを基本的なレシピに向け、調整するのが勝負です。一番大切なのは安心、安全な製品を造ること。品質を守るため一つひとつの作業に神経を使っています。
——最近は、再び地ビールが人気ですね。
カール 大手ビールメーカーも「クラフトビール」の名で打ち出してきています。ナギサビールには当初から日本一のビールを造る強い情熱があり、最初のブームを乗り越え、11月には白浜町に新工場を開きます。醸造は今までエールタイプのみでしたが、ドイツの仕込み釜を導入し、より多彩なスタイルのビールを造れるようになります。施設が充実するので、ミカンビールなど和歌山風のビールにも挑戦できたらいいですね。
——冷えたビールがおいしい季節です。
カール 私たちにとっては品切れにならないようにする最も忙しい時期です。地元食材とナギサビールを楽しめる直営レストラン「シラハマバーリィ」も千畳敷近くにあります。夏は予約がなければ難しいですが、立ち寄ってほしいですね。
【ナギサビール】
白浜町1197ー18。0739・43・7386
【バーリィ】
白浜町2927ー557。0739・43・7373
【読者プレゼント】ナギサビールのアメリカンウィート4本、ペールエール3本の1セットを抽選で5人にプレゼント。応募方法は3面参照(応募は20歳以上に限ります)。
(ニュース和歌山2015年7月8日号掲載)