和歌山中学卒業後、航空工学を学ぶために名古屋へ行きました。間もなく戦況が悪化し、学徒動員で飛行機工場で働くことに。当時の名古屋は航空産業の中心地で、何度も空襲の標的にされました。私たちが暮らしていた建物も狙われ、多くの仲間が命を落としました。辺り一面が血の海になり、手足はバラバラ、腸が木の枝に引っかかっていました。あのような悲惨な光景は2度と目にしたくないし、起きてはならないことです。
300万人もの犠牲を払ったあの戦争から70年。かつての反省を今、振り返るべきではないでしょうか。
7月16日に平和安全法制整備法と国際平和支援法が衆議院で強行採決されました。法律に「平和」「安全」とつくとロクなことはありません。昔、民主主義をつぶすための法律を治安維持法と呼んだのと同じです。
今回の法案は、自衛隊の役割を今よりずっと拡大し、海外派兵や米軍の支援にあてるものです。日本の若い自衛隊員の血を米国に捧げるための法律です。
今の憲法を決める国会で、当時の吉田茂首相は「古来すべての戦争は皆自衛の名の下に行われた。だから自衛のための戦争を認めると、結局元に戻ってしまう。ゆえに憲法は自衛のための戦争も禁止している」との言葉を残しています。太平洋戦争も「帝国は、今や自存自衛の為」と開戦に踏み切りました。
安倍晋三首相は「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」と言いますが、それを認定するのは時の政府です。これには、私たちは苦い経験があります。かつて政府とマスコミは、「満蒙は日本の生命線」とけん伝し、日中戦争に突入し、軍国主義一色になりました。私も「勝つまで戦う」と思っていました。社会の大きな流れは動き始めると止められず、冷静な判断をできなくしてしまうのです。
今回の法案は日本の国のあり方を根本的に変えてしまう法案です。大きな犠牲を払って勝ち取った平和憲法を守り、この危険な法案を廃案にしてしまうのが一番だと思います。
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(ニュース和歌山2015年8月1日号掲載)