ウクライナから黒海横断フェリーに乗り、ジョージア(グルジア)へ。ジョージアの物価は非常に安く、スイスのような自然、日本の居酒屋のような多様な美味しい郷土料理・お酒が豊富で、今後観光大国になるのではないかと思える国でした。その後、アゼルバイジャンを経由し、イランに到着しました。

 イランと聞くと何を思い浮かべますか? イラクとの戦争や、イスラム国が活動するシリアやイラク、かつてアルカイダが活動していたアフガニスタンやパキスタンなど、政情が不安定な国に囲まれて治安が悪い国だと思われる方も多いのではないでしょうか。イランは厳格なイスラム教国なので危険な国だと思われていないか、と気にしているイラン人も多くいます。

 イランは規律を重んじる国のため、肌の露出を控え、正装を心がけなければなりません。特に、女性は旅行者であっても髪の毛をスカーフで隠し、体のラインや肌が出るような衣服を着てはいけません。僕たちも服装や行動に気をつけ、緊張しながら自転車で走り出しました。

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 走り始めて5㌔で路肩に止まった車に呼び止められました。「一緒に写真を撮ってくれないか?」と言われ、写真撮影。10㌔で再び路肩に止まった車に呼び止められ、写真撮影とお菓子を頂きました。さらに15㌔では「家に来てご飯でもどうですか?」とのお誘いを頂きました。カスピ海に面した家に招かれ、美味しいご飯を頂きました。家族との話も弾み、宿泊までさせて頂きました。「もう1泊しないか?」との誘いを丁重にお断りし出発すると、この日も5㌔で写真撮影、10㌔で家へのお誘い…。

 昼時になるとイラン人は道路脇や中央分離帯に絨毯(じゅうたん)やテントを張り、至る所でランチを始めます。近くで休憩していると、そのランチに半ば強制的に参加させられます。全く前に進みません! ここまで人懐っこい国は初めてです。厳格なイスラム教のイメージが変わりました。

 イランはトルコと同様のおもてなし文化ですが、トルコと違うところは、半ば強制的というところでしょうか。他国に関する知識が少ないようで、自国文化に誇りを持ち、自国が一番だという印象を受けました。イラン人はスプーンとフォークを使った(スプーンがナイフ代わり)食べ方にもプライドを持っているようで、日本人はスプーンやフォークを使えないだろうと言われたときは驚きました。

 また、街は深夜まで活気があります。子供が深夜まで遊んでいて、危険な雰囲気はほとんどありません。今まで旅をしてきて、ここまで夜が安全そうな国は少なかったように思えます。

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 イランは「治安が悪い中東の国」という印象を持つ方が多いかもしれませんが、実際は、多少強引ではあるものの、何かしてあげたいという気質を持つ温かい人が多く、古代の遺跡や美しい宗教施設が数多くある、見所の多い国でした。

写真上=路肩で写真撮影に応じた
同下=美しいモスクも見所の一つ
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 自転車で世界一周の新婚旅行に挑む辻陽平さん、夕佳さんの連載は奇数月の第3土曜号掲載で次回は1月16日号。旅の様子はブログ「フィールドテスト 自転車世界一周」で随時更新中。
(ニュース和歌山2015年11月21日号掲載)