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 万葉の歌人、山部赤人が和歌浦を詠んだ和歌からその名をとった「あしべ焼」を看板商品とする老舗かまぼこ店「丸濵」(和歌山市和歌浦南)。明治時代から市民に愛されてきた伝統の味を守り、次々と新商品を打ち出している。製造部課長の丸市弘明さん(46)に、守り抜く技と新たな挑戦について尋ねた。 (文中敬称略)

ぷりぷり食感

──丸濵と言えば何と言っても「あしべ焼」です。

丸市 材料は白身魚のシログチをメーンに使い、しっかりした歯ごたえが特徴です。お客さんに「他のかまぼこに比べて弾力が全然違う」とよく言われる通り、食感は口の中でかまぼこが弾け、ぷりぷり。かむほどに甘味と焼き目の香ばしさが広がります。

──おいしい食べ方は。

丸市 やはりそのままが一番です。わさびじょう油を少し垂らすだけで十分おかずや酒のあてになります。魚食離れが進んでいると言われますが、子どもや年配の世代にかまぼこは人気です。20、30代にも食事の名脇役としてかまぼこを見直してもらい、たくさん食べてほしい。

受け継がれる技

──かまぼこ作りの道を選んだきっかけは。
丸市 実家が有田の漁師なんです。昔から釣ってきた魚を包丁でたたいてつくねを作るなど手伝いをよくしていました。あのころは有田に丸濵の販売店があり、正月にもらったときはすごくうれしかった。丸濵へはいとこが働いていた縁で34歳の時に就職しました。

──伝統の味を守る技を教えてください。

丸市 特に苦労したのは、すり鉢で練る魚肉の粘り具合をつかむことです。気温が高いと身が硬くなるので練り加減は職人の手にかかっています。塩も、入れるタイミングが違えば魚肉へのなじみ方が変わり、風味が違ってきます。引き継がれてきた味を守るため、修業中は何度も失敗を経験しました。

新商品が続々

──品数が豊富ですね。

丸市 限定品を合わせると、これまでに300種類以上作りました。製造中に思いついたアイデアは、仕事が早く終わった日に余った材料で試作します。チョコレートを混ぜたり、おにぎりを包んだり、そうめんにしたり…。かまぼこをパン粉で包んで揚げ、トンカツ風にした商品は好評で、サクッとした衣の中に弾力あるかまぼこの食感が人気です。

──型にとらわれない発想がユニークです。

丸市 様々な食べ方を創作することは、かまぼこの可能性を探ることにつながります。ものづくりに携わる1人として、味を磨くことと、次の段階へ進もうとする姿勢は大切だと思います。

──間もなく年末年始を迎え、かまぼこの出番が増えそうです。

丸市 これから1ヵ月が忙しさのピーク。地元の販売店をはじめ、京阪神の百貨店でも多くのお客さんが買ってくださいます。近年はインターネットでの注文が増え、関東へ送ることもあります。

──これからの展望を。

丸市 自分がおいしいと思っても、食べてくれた人がそう感じないと意味がない。自分が目指す味はお客さんの中にあるんです。幼いころに楽しみにしていた味を、今度は自分が届ける側になりました。当時の気持ちを大切にしながら、お客さんに喜んでもらえる商品を作り続けたいです。

 

【あしべ焼蒲鉾本舗 丸濵本店】
和歌山市和歌浦南2-1-1
☎0120・40・0001
8時〜18時(水日は17時) 年中無休

 

【読者プレゼント】「あしべ焼」と、口当たりの良い卵と魚の絶妙な調和が引き立つ「松葉焼」のセット(本店での引換券)を10人にプレゼント。応募方法はニュース和歌山2015年11月25日号紙面をご覧下さい。締め切りは12月2日(水)です。

(ニュース和歌山2015年11月25日号掲載)