マイソールシェフ 看板に踊る〝壺焼き欧風カレー〟の文字。和歌山市向のマイソールは、陶器の鍋で沸騰させたカレーを熱々のまま提供するのがスタイルだ。オーナーシェフ、貴志公一さん(41)が手間を惜しまず、70時間以上かけて仕上げたカレーは世代問わず、老若男女に愛される。

 

ロンドンの衝撃

 

 直火で熱した陶器製の鍋。その中でぐつぐつと音を立てたまま、カレーがテーブルに運ばれてくる。

 「ブイヨンにスパイスを加え、じっくり煮込んだカレーを最後まで熱々のまま食べてもらいたくって。あと、目で見てちょっと感動してもらいたいとの思いもあります」

 高校卒業後、複数の飲食店でアルバイト。22歳の時、遊学のためにイギリス・ロンドンへ渡り、偶然出会った日本人にふるまってもらった欧風カレーに衝撃を受けた。

 「スパイスを駆使し、タマネギを飴色になるまで炒めるなど、手間を惜しまないそのカレーにほれました。聞けばその方、実家が東京で有名な欧風カレー店だったんです」

 

風味に個性

 

 2000年からその店で修行。05年にふるさと和歌山に戻り、念願の店を構えた。

 「使うスパイスは15種類。カレーではあまり聞きませんが、風味に個性を出すため、スターアニスを入れています。中華料理に使う八角ですね。さらっと食べやすいカレーにしたくて、トマトは多めです。週に何度も足を運んでくれる常連さんもいますよ」

 一番人気はチキンカツカレー。紀州うめどりの胸肉を使うカツは油で揚げず、粉チーズをまぜたパン粉を付け、バターと一緒にオーブンで焼き上げる。具だくさんのカレーパンも評判で、とあるイベントに出店した際は用意した60個がわずか8分で完売した。

チキンカツカレー_dc 「サラダのドレッシングや福神漬、デザートのケーキも自家製。そば粉で作るフランスの郷土料理、ガレットは納得いくものをと3年前、店を2週間休み、本場ブルターニュ地方を回ってきました。変なこだわりなのか、全て自分でやりたいんですね。飽きのこないスタンダードな料理を地道に提供する店であり続けたい。日々そんな思いです」

 カレー同様、真っ直ぐな気持ちがアツイ。

 

欧風カレーレストラン マイソール
和歌山市向69-6、コミュニティプラザ貴志1階
昼=11時~15時、夜=18時~21時
日曜と月曜休み
☎073・451・8807。

 

(2017年1月11日号掲載)