月にはうさぎが棲んでいて、満月の夜は餅をついていると教えられた人は多いと思うが、東牟婁郡下里村(現・那智勝浦町下里)ではこんな伝承が残っている。満月ではないときに月を長く見ていると、桂男に招かれて命を落とすことにもなりかねないという。この桂男は絶世の美男で、特に女性を招くとか…。さて、桂男がどれくらい美男なのかというと、平安時代初期に書かれた『伊勢物語』の中で大変に美しい男を「桂男の君のような」と表現して以来、日本文学において「桂男」は単に美男のことを指すようになったほどだ。
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妖怪をこよなく愛する和歌山市の漫画家、マエオカテツヤさんが毎週土曜日、妖しの世界に誘います。
(ニュース和歌山2017年1月14日号掲載)