老舗和菓子店、総本家駿河屋(本社・和歌山市)が創業560年を迎えた今年、屋号を「総本家駿河屋善右衛門」に変更し、リスタートを切りました。室町時代に京都・伏見で創業した岡本善右衛門の名を店名に加えた今の思いを、岡本良太社長(46)に聞きました。

 

屋号に創業者名

──1月1日、屋号を変更しました。

 「今年で創業560周年。もう1度気を引き締めて和菓子と向き合い、今後も100年、200年と続けていけるようにとの決意の意味を込め、創業者名から『善右衛門』を屋号に加えました。昔からひいきにしてくださっているお客様には、『創業者の名前を入れたんですね』と気付いてくださる方も。私が23代目ですが、実は15代目までは『岡本善右衛門』の名を踏襲していたこともあって、年配のお客様には創業者名をご存知の方が少なくないんです。正直なところ、屋号変更に不安もありました。そんな中でこのような言葉をいただき、和歌山の皆様に長く愛されているのだと改めて感じております」

──屋号を変えてのリスタート、具体的には。

 「昨日15日、新商品『ばーむくーへん』を発売しました。一層一層丹念に焼き上げたバームクーヘンに、駿河屋発祥の和菓子、煉羊羹(ねりようかん)をシロップ状にして周りにコーティングし、どこかうちらしさのある一品に仕上げました。洋菓子が日本に入ってきた明治時代、和菓子と洋菓子の垣根ができたそうですが、近年、和・洋が一つになってきているように感じます。新たな節目、和・洋にとらわれず挑戦していこうと、新屋号第1弾商品に選びました」

 

新ブランドで挑戦

──他の取り組みは。

 「まずは海南店からとなりますが、新ブランド『鶴屋善右衛門』を同じく昨日立ち上げました。コンセプトは〝日々の楽しみに、和菓子を〟。羊羹、大福、おはぎといった定番をかわいく食べやすい大きさにした商品を取りそろえます。ご自身で召し上がっていただくのはもちろん、手土産に持って行きやすい1000円ぐらいのセットを充実させています。今後、他店舗にも広げる計画です」

──ふらっと立ち寄りやすそうです。

 「例えばどら焼き1個を買いに駿河屋へ来られますか? 私どもはそんなお客様も大歓迎ですけれど、どうしてもそのような利用の仕方は難しいとの方も多いと思います。以前、チョコ羊羹やチョコ大福、あんぱんを発売したことがあったのですが、『おいしいけれど、これを駿河屋さんが出すの?』といった反応がありました。鶴屋善右衛門では、駿河屋としてはやりにくいことに挑戦し、セカンドブランドとして育てていきたい」

──2021年はチャレンジの年ですね。

 「和菓子には人の心を和ませ、笑顔にする力があります。新たな挑戦もしていく一方、初代から代々受け継がれてきた〝菓子のみに生きる〟との志をこれからも守り続けていきたいですね」

(ニュース和歌山/2021年1月16日更新)