「マエオカテツヤの妖怪大図鑑」は前回に続いて今回も特別編。雨にまつわる和歌山の伝承2つを紹介します。

其の弐百四拾七 雨壺(あまつぼ)

怖さ:0
山の妖怪
出没地域:かつらぎ町ほか

 かつらぎ町の雨引山(あまびきやま)には「雨壺」があって、その蓋を取ると、どんな旱魃(かんばつ)の時でも雨が降るといわれている。こんな話を初めて聞く人も多いと思うが、雨壺は全国に伝承されていて、雨水が入った雨壺に何らかの行動をすると、雨に恵まれるとされる。また、美浜町にある龍王神社には「乙姫(おとひめ)の雨壺」と呼ばれる岩のくぼみがあり、長い間、日照りが続いた時、この雨壺に乙姫の歌を書き込んだ紙を投げ入れ、願をかけると、途端に降り出したそうだ。恵みの雨。今も昔も農家を中心に人々の暮らしに雨はいかに大切なのかを知らされる話である。

 

其の弐百四拾八 雨降らし

怖さ:0
海の妖怪
出没地域:みなべ町

 アメフラシは海で見られる軟体動物で、刺激すると紫色の液体を出すウミウシの仲間である。これが海岸の砂や岩に上がる時は、必ず雨が降ると各地で伝えられてきた。こんな話をみなべ町で聞いたことがある。昔、旱魃があった時、村に見知らぬ女が行き倒れていた。女はひどくやつれていたが、村人の献身的な介抱で、すっかり元気になった。女はお礼にと、「雨が必要な時は浜に出て、私を呼んでください」と意味深な言葉を残して去っていった。村人が早速、浜に出て呼ぶと、海から女が現れて、岩場に腰をかけた。すると、突然、雨が落ちてきたという。

(ニュース和歌山/2021年6月19日更新)