《回答者》
◆脳神経外科
貴志川リハビリテーション病院 亀井 一郎院長

 お父様のご様子、心配ですね。

 慢性硬膜下血腫という疾患をご存じでしょうか。高齢の方が頭部打撲1~2か月後に徐々に脳の表面に流動性の(ぜんざいの汁のような)血が溜まってきて、やがてそれが100㎖以上の量になり、脳を圧迫して、物忘れや手足のまひ(左右どちらか一方の手から物が落ちたり、片方の足を引きずって歩く)などの症状が出ることがあります。

 症状は1~2週間かけて進行してくるので、家族や周辺の方は確実に認識できます。慢性硬膜下血腫は高齢の男性に多く、ぶつけたという自覚のないような軽い頭部打撲(転倒による打撲や冷蔵庫の扉で頭を打つ等)によって、脳表面の小さな血管が切れて、少しずつ少しずつ、血が溜まってきます。そして時間が経ち、ぶつけたこと自体を忘れてしまっているような時期になって症状があらわれてくるのです。

 でも手遅れになることはありません。局所麻酔で脳神経外科医による小さな手術(30~60分)ですっかり良くなります。手術室から出てきた患者さんは完全に元通りの元気な人になっています。

 ただし、超高齢の方では術後、短期間のリハビリが有効です。

(ニュース和歌山/2021年6月27日更新)