県出身や和歌山に縁のあるトップアスリートを紹介する「わかやまスポーツ伝承館」は今年で開館10周年。現在は東京オリンピック・パラリンピックに出場する県ゆかりの13選手に展示でエールを贈っています。江川哲二館長(58)に話を聞きました。
地元国体に向け
──開館したのは。
「2011年です。その4年後に開かれる紀の国わかやま国体に向けて機運を高めようと、県の委託を受けて開設されました。往年のアスリートを後世に伝え、まだ若い現役選手たちの頑張りを紹介するほか、県民の皆さんにスポーツをしてもらうきっかけとなるセミナーも開いています」
──前畑秀子さん、小久保裕紀さん、田中3兄妹…。そうそうたる方々の展示物が並びます。
「若い親世代からは、『前畑秀子さんって橋本市出身やったんや!』『前の東京五輪女子バレー金メダルのメンバーに和歌山出身の宮本恵美子さんがいたんや』などの声が聞かれます。〝前畑頑張れ〟や〝東洋の魔女〟との言葉は知っていても、和歌山出身者とご存知ない世代なんでしょうね。それをここでインプットしてもらい、さらにその子どもさんへと伝えてくださると、〝伝承〟館としてはうれしいですね」
さわれるメダル
──本物のオリンピックメダルにふれられるコーナーは有名です。
「開館当初から土日限定で開設しています。伝承館だけの特別なことをと私が発案しました。1972年のミュンヘン五輪柔道金メダリスト、野村豊和さんに『五輪に出たいと思っている子がメダルの重さや手ざわりを感じられれば、次の日から練習に臨む意気込みが違ってくるはず』と思いをぶつけました。教員をしていた野村さんは『将来のアスリートが生まれるきっかけになるなら』と快諾してくださいました。現在、野村さんのを含め、3つのメダルを手に取ってもらえます」
──確かに五輪が夢舞台でなく、具体的な目標になりそうです。
「熱心にさわっていた中学生ぐらいの子に話を聞くと、『将来、水泳で五輪に出たい。メダルを獲ったら飾ってくれる?』と。ここがそんなステータスのある場所になったんだとうれしく、『逆にぜひ展示させてください』とお願いしました(笑)。同じような情熱のある子は3人いました」
──現在は「がんばれわかやま!TOKYO 2020」展を開催中です。
「開館して以降、夏の五輪・パラは3回目。今回出場する県関連選手はロンドン、リオより多い13人です。この展示でその魅力を知ってもらえれば、地元選手への関心度がぐっと上がるはず。私たちも展示でめいっぱい応援させてもらいます」
わかやまスポーツ伝承館
和歌山市本町のフォルテワジマ3階。入館無料。午前10時〜午後7時。073・423・2215。
(ニュース和歌山/2021年7月17日更新)