其の弐百五拾参 光り物
怖さ:0
山の妖怪
出没地域:新宮市
夏のある日、Kさんがお爺さんと新宮市の山へ山菜狩りに行った時のこと。その日は山菜が大量に採れた。ふと気がつくと夕暮れ時。ふたりは結構山の深くまで来ていたのだ。日が沈むまでに帰ろうとしたが、来た道が分からない。お爺さんと途方にくれていた。すると、何やら遠くの方から光が近づいてきた。人ではないことはすぐに分かった。その光の動きが速かったからだ。見る見るうちに近づいてきた光は、木々の間をすり抜けて暗闇の奥へと進んでいく。ふたりは光の後を追って麓までたどり着いたのだ。お爺さんは「あれは光り物や。縁起がええからついてら。やっぱり助かった」と笑った。しかし、KさんにはUFOに見えたのだという。
其の弐百五拾四 ガタロ
怖さ:0
川の妖怪
出没地域:有田川町
Yさんは子どものころ、夏休みは必ず父の故郷である有田川町で過ごした。田舎ではいつも遊ぶメンバーがいた。従兄弟と近所に住むやっちゃん。そして、もう一人、Bくんだ。都会育ちのYさんはこの4人で夏休みを満喫していた。特にBくんは無口だが、遊びの天才で、魚や虫の捕り方を教えてくれる先生だった。次に有田川町へ行ったのは2年後のこと。Yさんは小6になっていた。早速、いつものメンバーが揃った? いや、Bくんがいない。皆に聞いてもBくんのことさえ覚えていなかった。「あれだけ毎年遊んでいたのに覚えてないなんて…」と不思議そうなYさんに、おばあさんが言った。「それは、ガタロが遊びに来てたんや」
(ニュース和歌山/2021年7月24日更新)