紀の川市の豊かな農産物を漬物にと提案する「すみれ醗酵」が6月、同市下井阪にオープンしました。元報道ヘリパイロットの経歴を持つ関口美治さん(56)が、古くより発酵文化が根付く和歌山で、旬の味を生かす発酵食品を提供します。母から伝授されたドレッシングとぬか床が売りで、「地元の農産品に発酵の力を合わせることで、皆の腸を元気にしたい」とほほ笑みます。

 

夏の食欲アップ

──どんな発酵食品を扱っていますか?

 「特殊な植物性乳酸菌スミレ株の入った発酵食品です。母が仙台で発酵食品の店をしており、スミレ株は寝たきりになった祖母のために母が作ったのが始まりです。祖母は腸内環境がよくなり、食欲が出たそうです。この技術を母から学び、店を開きました」

──おすすめは?

 「新鮮なトマトとニンジン、タマネギをすり下ろし、1週間ほど発酵させた『食べるドレッシング』です。乳酸菌が生きて腸まで届き、活性化することで、免疫力がアップします。少しピリッとした炭酸のような刺激が野菜によく合い、食欲が低下する夏の一品にぴったり。甘酒と混ぜて飲むのもおすすめです」

──他にどんなものが?

 「食べるドレッシングにぬかを加えた『すみれのぬか床』です。食べる2〜3時間前に漬ければOK。臭いがほぼないため、旬の地元野菜や果物を漬けても素材の味をじゃましません。ミニトマトやキュウリ、秋には柿など。風味の付いたぬかは洗い流さずそのまま食べてもらいたいですね」

──お客さんの反応は?

 「家で作った野菜に軽く手を加えて友人に贈るのにちょうど良いと喜ばれます。体を冷やすからと避けていた夏野菜を、ぬかに漬けて食べるようになった常連客も。お客様からの要望でフルーツ漬け教室を開き、ぬかの扱い方を教えています。桃やキウイが人気です」

 

報道畑から転身

──店を構える前は?

 「報道ヘリのパイロットを30年間していました。2014年、長野と岐阜の県境にある御嶽山が噴火し、多くの登山客が死傷した災害を上空から取材した際、不幸や悲しみの最前線に立たざるを得ないことにかっとうしました。3年前に目の病気を患い、『これはヘリから下りなさいということだろう』と、今年、早期退職しました」

──なぜ和歌山で店を?

 「野菜や果物など紀の川市の豊かな農産物と結びつけることで、健康に役立ちたいと考えました。和歌山を選んだのは、しょう油やみそなど発酵文化が根付いている地域だから。2年前にかつらぎ町出身の女性と再婚した縁もあり、今年4月に移住しました」

──今後は?

 「ゆくゆくは店内の試食スペースを活用し、カフェとして気軽に発酵食品を使った食事を楽しんでもらい、腸から人が輝く店にしたいです」

 

【すみれ醗酵】
紀の川市下井阪12-9
10:00〜18:00
㊐㊗、第1・3㊊休み
☎︎0736・60・5830

(ニュース和歌山/2021年8月7日更新)