世界最高峰と称されるヴァイオリン、ストラディヴァリウスの音色を、和歌山市出身の演奏家、寺下真理子さんが地元で響かせます。9月末でその歴史に幕を閉じる同市民会館を会場に、「和洋折衷〜故郷を想ふ」と題したコンサートを9月28日㊋に開催します。
思い出のホール
──今月末で閉館となる現在の和歌山市民会館で演奏会を開きます。
「小さいころから何度も舞台に立った、思い出の詰まったホールです。中学生時代にはニュース和歌山さん主催の和歌山音楽コンクールで県知事賞をいただきました。苦楽を共にしたホールと言っても過言ではないかもしれません。音響が非常に良く、閉館は名残惜しいですが、最後にその響きを存分に味わいたいなと思っています」
──ヴァイオリンの名器、あのストラディヴァリウスで演奏されるんですね。
「日本ヴァイオリンさんから貸与されました。並みではない力強い音と深い音色に、練習しながら圧倒されています。製作から300年以上経っているものの、楽器の状態はすばらしく、その健康状態にも驚いています。いくたびの戦争を超え、このストラディヴァリウスがたどってきたであろう様々な歴史をその音から感じますし、また、それがぜい沢な時間です。エネルギーが強いこの名器を弾きこなすのは、こちらの技術、そして体力が問われます。ストラディヴァリウスで練習した後はくったくたになります。私自身をもう数段階、成長させてくれそうです」
和と洋 コラボ
──コンサートの副題は「和洋折衷~故郷を想ふ」です。
「ヴァイオリン、ピアノ、箏、三味線という洋楽器2本、和楽器2本でのコラボレーションになります。和楽器の音色に魅了され始めたのは数年前。ヴァイオリンやそのクラシックの作品はヨーロッパで生まれたものなのですが、改めて自分のアイデンティティーを考えた時、どうしても和のテイストを取り入れてみたくなりました。今回、西洋の楽曲、例えばヴィヴァルディの『四季』やモンティの『チャルダッシュ』は和楽器を交えて、一方で『まりと殿様』『ふるさと』など日本の曲を洋楽器でと、両サイドの世界観を取り入れています。新型コロナウイルスの影響で疲れていらっしゃる方も多いと思いますが、コンサートで少しでも元気になってもらえたらうれしいです」
寺下真理子ヴァイオリンコンサート
9月28日㊋午後2時、和歌山市民会館小ホール。
1部は「美しきヴァイオリンの名曲」と題し、エルガー『愛のあいさつ』、バッハ『G線上のアリア』ほかを披露。2部は「和洋折衷が織りなす日本の心」をテーマに、和楽器奏者2人と岡野貞一『紅葉』、宮城道雄『春の海』などを聴かせる。
3500円。音楽愛好会フォルテ(073・422・4225)。
(ニュース和歌山/2021年9月18日更新)