人気の長期連載「マエオカテツヤの妖怪大図鑑」。今回は秋の味覚にまつわる妖怪2つを紹介します。

 

其の弐百六拾弐 栗の巻物

怖さ:1
山の妖怪
出没地域:有田川町

 元地域おこし協力隊の知人にとって、栗は不思議なものだという。彼女は有田川町出身なのだが、幼いころは地元で採れた栗を茹でたり、焼いたりして、おやつによく出てきたそうだ。ある日、栗を食べていると、口の中にガリッとあたる異物がある。不思議に思って口から出すと、それは小さな巻物だった。広げてみると、達筆でなにやら長々と書いてある。まだ小さかった彼女には内容がさっぱり分からなかったが、その後も栗を食べていると、度々、巻物が出てくるので、栗とはそういうものだと思っていたらしい。「最近の栗は全然巻物が出てこない」と彼女はそう言って、寂しそうに笑った。

 

其の弐百六拾参 松茸の怪

怖さ:2
山の妖怪
出没地域:新宮市

 新宮のあるお屋敷に奉公していた少女がいた。ある日、家人から松茸狩りを命じられたが、少女は松茸など採ったことがない。困った少女に近所のご隠居がよく採れる場所を教えた。しかし、そこはマムシの巣でもあった。少女は意を決して、家人の言いつけを守り、老人の言う山へ入っていった。蛇が出てくる前に松茸を採ろうと探すが、思うようには見つからない。諦めかけているところへ、大蛇が鎌首を持ち上げて現れた。少女は懸命に、「南無阿弥陀仏」とお経を唱えた。すると、急に辺りに陽が射し、大蛇は大きな松茸に姿を変えたという。

(ニュース和歌山/2021年10月23日更新)