《回答者》
◆リハビリテーション科
今村病院リハビリテーション部
作業療法士
虎尾 駿先生
アルツハイマー型認知症は、アミロイドβという特殊なタンパク質が脳内に過剰に蓄積することが原因とされています。記憶を司る「海馬」という部分から萎縮が始まり、脳全体が縮んでいく進行性の認知症です。
主な症状は、時間や場所が分からない、人の名前が思い出せない等です。ほかにも、怒りやすくなったり、徘徊(ウロウロすること)もみられたりします。買い物や洗濯などの家事動作がしにくくなり、食事や入浴などの日常生活動作にも影響が出てきます。個人差はありますが、多くは2~3年で進行します。
進行を防ぐため、特に注意すべき点は2つです。
1つ目は、本人の話をじっくりと聞き、寄り添うことです。本人が不安を抱えたままだと、うつにつながる可能性もあり、症状悪化の原因にもなります。まずは、本人のペースに合わせてじっくりと話を聞き、不安を取り除き、安心して日常生活を送ってもらえるよう配慮します。また、本人のできることや役割を奪わないようにサポートし、対等に接することも大切です。例えば、特徴的な症状の1つに「物盗られ妄想」があります。本人を責めるのではなく、一緒に探すなどの対応が好ましいです。本人が見つけやすいような環境を整えるのもよいでしょう。そのほか、他人と交流しながら本人が今まで取り組んでいた家事や趣味などを楽しむことで、生活の質も上がります。
2つ目は、運動をすることです。運動によってアミロイドβが分解され、脳内に蓄積されにくくなります。
ここで、自宅で座って行える簡単な運動を紹介します(イラスト参照)。1人でもできますし、皆で楽しみながら行えばより効果的です。腕を振って足踏みしながら、決まった数字で動きを変え、これを繰り返します。
①3の倍数で手拍子をします。
②次に、5の倍数で頭をタッチします。
これを50まで数えながら行います。軽く汗ばむ程度が理想ですが、適度に休憩を挟んでください。慣れてきたら、倍数を変えるのもよいでしょう。
最後に、認知症にはアルツハイマー型認知症だけでなく多くのタイプがあります。認知症について詳しく知りたい方は、近くの病院の専門医に相談することをお勧めします。
(ニュース和歌山/2021年11月28日更新)